君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

「気を抜いたらダメだよ、吉野くん。でないと俺、取られちゃうらしいからね」

「だから何の――――」


言いかけて、“気を抜いたらダメ”、“取られる”、の台詞にふと思い当たるものがあった。
それはついさっき、山上が図書室を出て行く時に吉野に残した台詞だ。


「思い出した?」


吉野の反応で察したのだろう、佐渡が楽しげに問いかける。


「ダメだよ、吉野くん。しっかり俺を見てないと、俺だけを見ていないと、気を抜いてたら取られちゃうよ?」


ふふっと楽しげに佐渡が笑う。


「いいの?俺があの子に取られちゃっても」

「……取られるも何も、先輩は俺のじゃありませんから」


そう、佐渡は吉野のものではない。吉野のものには永遠にならない。わかっていたから、佐渡への想いはずっと秘めたままにしておくつもりだったのに、どうやら本人に気付かれていたらしいと知った先日の放課後。
知られたら最後、気持ち悪いと拒絶されると思っていたのに、佐渡の態度はそれ以降も変わらなかった。