君の声は甘く優しく、募る想いは切なく苦しく

“わかった”“わからない”の応酬が続くと、一体何がわかっていて何がわかっていないのか、言っている方もわからなくなってくる。
けれどそんな吉野とは反対に、佐渡は余裕たっぷりに、なんなら楽しそうに「大丈夫だよ、吉野くん。何も怖いことなんてないからね。ほーら、俺の目を見てごらん」なんて言ってくる。


「……先輩、怪しい催眠術師みたいになってますよ」

「吉野くんはだんだん、好きな人の話がしたくなーる」


完全にふざけている佐渡に、「したくなりません」と吉野は返す。


「それは残念。吉野くん、催眠術かかりやすそうなのに」


とても残念そうには聞こえない口調でそう言って、佐渡は再びカウンターに背を預ける体勢に戻った。吉野は人知れずほっとする。


「それにしても、ライバルか……。そっかあ……。中々強敵そうだね、吉野くん」

「……急に何の話ですか?」


先ほどまで“わかった”“わかってない”の応酬をして、催眠術師の真似事をしたかと思ったら、今度はしみじみと呟き出す佐渡。