========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 =========================
 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。
 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。
 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?
 夏目房之助・・・夏目リサーチのオーナー。EITO東京本部の副司令官。夏目リサーチの経営は妻と妹に任せている。
 瀬名昌昭・・・ミュージシャン。コロニー以降、辛口コメントで有名になる。EITOに協力する場合もある。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。

 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
 皆が出勤すると、夏目がいた。
 「済まない。急ぎの案件が出来た。笠置さん、これを。」
 夏目は笠置にSDを渡して、笠置はマッチングシステムにセットした。
 「実は、今日、お昼前。高円寺付近で瀬名さんが襲われた。」
 「瀬名さんと言えば、歌手兼俳優で、時々EITOの事件でも関わりのある?あ。参議院選挙、立候補したんだ。」
 「流石、笠置さんはよく知っている。このSDは、襲われた時、利根川さんが撮影したものだ。」
 「犯人が映っているんですね、夏目さん。」と、高山は言った。
 「以前、『しごき隊』とか言う、政治団体もどきが立候補者の邪魔をしたことがある。対立候補が雇ったんだろうが、やりすぎだ。ぎゃーぎゃー喚くのではなく、傷害だ。幸い全治二週間だが、ジャック・ナイフで頬を切られた。瀬名さんでなければ所轄の仕事だが・・・。EITO関連の場合もありうる。瀬名さんは、ライブの時毎に、EITOを擁護する発言もしている。」
 「参議院選挙がいよいよスタートしましたからね。瀬名さんは、コロニーの時、SNSで辛口コメントを発信していたが、単なる売名行為でないことは、よく知られています。選挙に立候補するとなると、敵も多い。立候補を取り止めろ、と言う無茶な輩もいる。だが、口の攻撃だけで無くなったら、単なる暴力だ。思想も政治哲学もない。」と高山は憤慨した。
 アラームが鳴った。
 画面を見て、3人は唸った。
 CIAからのデータと一致したのだ。名前はジョニー・ホンダ、性別は男性と書いてある。
 「元マフイアか。国際指名手配されたのも同じだな。」と、夏目は言った。
 夏目は、警視庁へのホットラインで久保田管理官に連絡を入れた。
 笠置が、マッチングデータを警視庁の、『連絡ボックス』に送った。
 電話を終えた夏目の前に、榊がバスケットを置いた。

 「『豚バラとズッキーニのピリ辛みそ炒め』と『ズッキーニとトマトの重ねチーズ焼き』です。警視正用のを先にお持ちしました。これからまた、EITOに戻るんでしょ?ズッキーニ、お嫌いでした?」
 夏目は、深く頭を下げ、急いで出て行った。
 「いやね、あることで、ホテルの孫弟子のこと思い出しましてね。彼はズッキーニ料が得意料理でした。」
 「沖縄と言えば、ゴーヤと思ってました。『ニガウリ』ですよね。」と高山が言うと、「ズッキーニも結構有名ですよ、高山さん。ゴーヤもズッキーニも夏バテ防止に良いですよ。元々の産地はメキシコらしいですが、日本じゃ長崎県、宮崎県で全国の60%の生産量です。今回は沖縄県産のズッキーニです。ゴーヤ同様、苦みが嫌いな人は敬遠するかも知れませんが、カリウムやビタミンC、β-カロテンなど、健康に役立つ栄養素を豊富に含んでいます。笠置さん、高山さん。『豚バラとズッキーニのピリ辛みそ炒め』の方は、『赤味噌』がミソでして・・・。」
 榊の講釈を聞いているのか聞いていないのか、ご飯と一緒に舌鼓を打つ2人だった。
 瀬名からの「お礼」のメールを読むのは、明け方になるだろう。
 ―完―