========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 =========================
 笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。
 高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。
 榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?
 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。
 筒井[新里]あやめ警視・・・警視庁テロ対策室勤務。「落としのプロ」と異名を持つ。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。
 ※回鍋肉
 回鍋とは、鍋を回す(あおり炒めや鍋返しをする)ことではなく、一度調理した食材を再び鍋に戻して調理することである。中国の回鍋肉では、皮付きの豚肉の塊を茹でるか蒸した薄切りを使用し、野菜には蒜苗(ソンミョウ。葉ニンニク)を使う。味付けもトウガラシや豆板醤を多用した辛味の強いものである。
 が、日本の回鍋肉の場合は、少し違う。四川省出身の中華料理人、陳建民が回鍋肉を日本へ広めた際に蒜苗がキャベツに取って代わられ、それが日本の一般的なものとなった。本場のものに比べ、甜麺醤を多めに使った甘辛い味なのも特徴である。また、手間を省くために最初から薄切り豚肉を使うレシピも考案された。市販の合わせ調味料を使って家庭料理として作る際には、そちらが著名なものとなっている。(Wikipediaより)

 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
 笠置達が出社すると、新里警視と副社長の朱美が、既にいた。
 厨房に入る榊に、朱美が声をかけた。「榊さん、今夜はなあに?」
 「回鍋肉です。」
 笠置が、「『お使い』はついでですか?」と、朱美に尋ねた。
 2人は、悪びれず頷いた。
 笠置が、警視庁からのメールを開くと、添付ファイルがあった。
 ダウンロードし、マッチングシステムに送った。アナログデータを読み込むことも出来るが、デジタルデータを呼び込むことも出来るのだ。
 「19日正午すぎ、横浜市の市道で白バイの追跡を受けたオートバイが転倒し、運転していた16歳の少年が手の骨を折る大けがをしたんだけど、2人乗りのオートバイでノーヘルだったから、白バイ警察官が職質したら、逃亡したのね。逃げる途中で、同乗者の少年がCDを投げたの。今、捜索中だけど、見つからない。その少年の方は逮捕連行したけど、運転していた方は取り逃がしてしまった。CDの中身を確認していなかったけど、闇バイトで雇われた人物に前金を渡された、と言っているの。」
 新里の説明に続いて、朱美が言った。
 「その少年のモンタージュを作らせて、ウチの『ガチャガチャデータ』の出番。」
 ガチャガチャデータとか、カチャカチャデータと言っているが、夏目リサーチが市場調査の『ついで』に撮影されたデータのことである。
 最近は、市場調査の方の仕事が少ないので、『架空調査』を名目上設定、通行人がある度にバイト君にカチャカチャとカウンターで数えさせている。
 システムが取り込んだモンタージュの絵は、3D加工された上で、市場調査のデータとマッチングさせる。次に、公のデータ、つまり、運転免許証データ、お名前カードデータと照合させて行く。
 30分後。あたりに、良い匂いが立ちこめる頃、答が出た。
 「台東区在住の槐竜一か。指名手配ね。えっと・・・。」
 新里が迷っているので、高山が「このPCでメール、送ってください。」と言った。
 「回鍋肉もお忘れ無く。」と、榊が声をかけて来た。
 新里と朱美は、ゆっくりと食べた後、帰って行った。新里は途中まで朱美を送るそうだ。
 「新里警視って、結婚したんだよね。回鍋肉の作り方くらい教えてあげれば良かったかな?」
 「どうせ、作らないよ。人間を『落す』のは得意らしいけどね。」と、笠置は言った。
 ―完―
 ※フライパンを熱し、油を入れ豚肉を強火で炒め、色が変わったら長ネギ、キャベツ、ピーマンの順に入れてさっと炒める、そうです。