========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 =========================
笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。
高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。
榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?
久保田管理官・・・警視庁管理官。
夏目房之助・・・夏目リサーチのオーナー。実質経営は妻の優香に任せている。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。
午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
「笠置さん、退院おめでとう!!」
入室前に、夏目と久保田が揃っているので、笠置は驚いた。
榊は、仕込みの準備をしていたが、手を止めて、やってきた。
「今回は、大阪府警からの正式依頼だ。南部興信所の幸田所員、倉持所員が大阪・四つ橋筋、北浜付近で、トラックと軽四の衝突事故を目撃した。トラックは、青信号、緑信号で直進中だったが、暴走してきた軽四が横っ腹に当たった。トラックのドライバーは軽傷で済んだが、軽四のドライバーは救急搬送されたが、死亡。幸田所員の話によると、ブレーキをかけた形跡は無かった。防犯カメラと複数のドライバーの証言で、赤信号を幾つも無視した感じの走行だったから、若者か外国人の暴走かと思われた。だが、ブレーキ痕もなく、ブレーキオイルに細工がされていたことが判明した。詰まり、事故を装った殺人だ。偶然、幸田所員が運転免許証を拾ったんだが、極めて特殊な運転免許証だった。」
久保田管理官は、幾つかの写真を皆に並べて見せた。
「2重になっていたんですか?」「うむ。重ねてあったから、便宜上、『上の運転免許証』『下の運転免許証』と言うが、『上の運転免許証』は偽造運転免許証で、『下の運転免許証』は、本物の運転免許証だ。皆も知っての通り、運転免許証偽造防止の為、ICチップが埋め込まれている。だが、『上の運転免許証』にも『正しいICチップ』データがあった。これは、両方のデータが保存されたものだ。無論、本人の顔写真も入っている、原形が分からない顔が。」
久保田管理官が差し出した記録媒体はZIPだった。
「ああ、懐かしいなあ。でも、何で?」笠置の疑問にすんなりと久保田は答えた。
「移動中に盗まれた場合を備えて、『時代遅れ媒体』を使っているんだ、警視庁では。わんさか余っているのも事実だが。再生装置が無ければ、タダの磁気記録媒体だ。」
笠置は、ZIPをPCの補助記憶装置ZIPドライブに入れ、「検索手順」を打ち込んだ『指示』アプリを通じてシステムに送った。
「で、夏目リサーチとしては、2つの運転免許証の人物が同一か、その人物に該当するデータがあるか?を調べる。因みに、偽の方の運転免許証の裏にナイフガンナイフのような模様が描かれていた。」
「じゃ、夏目さん。ダークレインボウの組織と関わりがある、と?」、と高山が言った。
「ひょっとしたら、潜入捜査員とか。」と榊が言ったが、久保田は真顔で「当たらずとも遠からず、かな?少なくとも警視庁の捜査員ではない。マトリも行方不明者はいないと言っている。」と、応えた。
「あ。冗談だったのに。」と言いながら、榊は厨房に消えた。
「副総監は、万一の場合は陸自経由でアメリカに確認すると言っている。その場合は、米軍からCIAかFBIに確認が行く。」
久保田の言葉に、「まるでアメリカドラマみたいだ」と高山は思ったが、黙っていた。
準備が出来たので、榊が料理を・・・皆を呼んだ。
「予定を変更して、手っ取り早く、『すき焼き』にしました。フーフー言って食べましょう。」
食べながら、久保田管理官は、「この間、小柳警視正にここの『夜食体制』を話したら、かなり悔しがっていたよ。転勤したら紹介する、と言っておいたが、当面転勤はないだろう。不倫なんかするからだよ。」と、言った。
「ええ?EITO大阪支部は、『島流し』ですか?」と笠置がフーフーして食べながら言うと、「精算の前に清算しなくちゃいけないからね。」と、夏目が言った。
「夏目さんは、大丈夫なんですか?」「ウチ?カチカチデータがあるからね。そういうリサーチされてて浮気なんか出来ないよ。それに、そんな暇ないし。幾ら女性が多い職場でもね。それに・・・。」
「それに、何ですか?夏目さん。」と高山が問うと、「大文字君の目が恐いから。」と、眉をひそめて夏目が応えたので、皆は爆笑した。
午前3時。アラームが鳴った。
随分と時間がかかったが、マッチングシステムが正常終了したのだ。システムエラーの場合は、音が違う。
仮眠室から、皆は出てきた。
システムから繋がるディスプレイには、こう書かれていた。
『骨格から推定される、この人物は、コウ・ユーユー。10年前にアメリカから帰化して高橋与一になった。運転免許証Aの写真の人物と同一と判定。運転免許証Bの人物は、10年前に行方不明になり、警察に捜索願が出されていて、その後、区役所に失踪届が出された、阿川恭一と推定される。尚、運転免許証Bの更新期限は過ぎている。』
「相変わらず、凄いシステムだな。榊さんの冗談は現実になった。取り敢えず、副総監宛にメールしておこう。笠置さん、作業用のPC、ある?」
「これです。」と、笠置は自分のPCを起動し、ネットに繋ぎ、警視庁テロ対策室の宛先を指定しておいた。すかさず、久保田管理官は文章を書き、システムの検索結果をテロ対策室に送った。
「お邪魔さま。」「管理官。夜中ですけど・・・。」「村越警視正が待機しているよ。今は、アメリカは夕方かな?」
久保田管理官と夏目は、慌ただしく出て行った。
「2度寝する?」と笠置が言うと、榊も高山も賛成した。
まだ、夜明けには、時間があった。
―完―
============== 主な登場人物 =========================
笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。分室リーダー。
高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。Web小説ライターでもある。
榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。分室のまかない担当?
久保田管理官・・・警視庁管理官。
夏目房之助・・・夏目リサーチのオーナー。実質経営は妻の優香に任せている。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。
午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
「笠置さん、退院おめでとう!!」
入室前に、夏目と久保田が揃っているので、笠置は驚いた。
榊は、仕込みの準備をしていたが、手を止めて、やってきた。
「今回は、大阪府警からの正式依頼だ。南部興信所の幸田所員、倉持所員が大阪・四つ橋筋、北浜付近で、トラックと軽四の衝突事故を目撃した。トラックは、青信号、緑信号で直進中だったが、暴走してきた軽四が横っ腹に当たった。トラックのドライバーは軽傷で済んだが、軽四のドライバーは救急搬送されたが、死亡。幸田所員の話によると、ブレーキをかけた形跡は無かった。防犯カメラと複数のドライバーの証言で、赤信号を幾つも無視した感じの走行だったから、若者か外国人の暴走かと思われた。だが、ブレーキ痕もなく、ブレーキオイルに細工がされていたことが判明した。詰まり、事故を装った殺人だ。偶然、幸田所員が運転免許証を拾ったんだが、極めて特殊な運転免許証だった。」
久保田管理官は、幾つかの写真を皆に並べて見せた。
「2重になっていたんですか?」「うむ。重ねてあったから、便宜上、『上の運転免許証』『下の運転免許証』と言うが、『上の運転免許証』は偽造運転免許証で、『下の運転免許証』は、本物の運転免許証だ。皆も知っての通り、運転免許証偽造防止の為、ICチップが埋め込まれている。だが、『上の運転免許証』にも『正しいICチップ』データがあった。これは、両方のデータが保存されたものだ。無論、本人の顔写真も入っている、原形が分からない顔が。」
久保田管理官が差し出した記録媒体はZIPだった。
「ああ、懐かしいなあ。でも、何で?」笠置の疑問にすんなりと久保田は答えた。
「移動中に盗まれた場合を備えて、『時代遅れ媒体』を使っているんだ、警視庁では。わんさか余っているのも事実だが。再生装置が無ければ、タダの磁気記録媒体だ。」
笠置は、ZIPをPCの補助記憶装置ZIPドライブに入れ、「検索手順」を打ち込んだ『指示』アプリを通じてシステムに送った。
「で、夏目リサーチとしては、2つの運転免許証の人物が同一か、その人物に該当するデータがあるか?を調べる。因みに、偽の方の運転免許証の裏にナイフガンナイフのような模様が描かれていた。」
「じゃ、夏目さん。ダークレインボウの組織と関わりがある、と?」、と高山が言った。
「ひょっとしたら、潜入捜査員とか。」と榊が言ったが、久保田は真顔で「当たらずとも遠からず、かな?少なくとも警視庁の捜査員ではない。マトリも行方不明者はいないと言っている。」と、応えた。
「あ。冗談だったのに。」と言いながら、榊は厨房に消えた。
「副総監は、万一の場合は陸自経由でアメリカに確認すると言っている。その場合は、米軍からCIAかFBIに確認が行く。」
久保田の言葉に、「まるでアメリカドラマみたいだ」と高山は思ったが、黙っていた。
準備が出来たので、榊が料理を・・・皆を呼んだ。
「予定を変更して、手っ取り早く、『すき焼き』にしました。フーフー言って食べましょう。」
食べながら、久保田管理官は、「この間、小柳警視正にここの『夜食体制』を話したら、かなり悔しがっていたよ。転勤したら紹介する、と言っておいたが、当面転勤はないだろう。不倫なんかするからだよ。」と、言った。
「ええ?EITO大阪支部は、『島流し』ですか?」と笠置がフーフーして食べながら言うと、「精算の前に清算しなくちゃいけないからね。」と、夏目が言った。
「夏目さんは、大丈夫なんですか?」「ウチ?カチカチデータがあるからね。そういうリサーチされてて浮気なんか出来ないよ。それに、そんな暇ないし。幾ら女性が多い職場でもね。それに・・・。」
「それに、何ですか?夏目さん。」と高山が問うと、「大文字君の目が恐いから。」と、眉をひそめて夏目が応えたので、皆は爆笑した。
午前3時。アラームが鳴った。
随分と時間がかかったが、マッチングシステムが正常終了したのだ。システムエラーの場合は、音が違う。
仮眠室から、皆は出てきた。
システムから繋がるディスプレイには、こう書かれていた。
『骨格から推定される、この人物は、コウ・ユーユー。10年前にアメリカから帰化して高橋与一になった。運転免許証Aの写真の人物と同一と判定。運転免許証Bの人物は、10年前に行方不明になり、警察に捜索願が出されていて、その後、区役所に失踪届が出された、阿川恭一と推定される。尚、運転免許証Bの更新期限は過ぎている。』
「相変わらず、凄いシステムだな。榊さんの冗談は現実になった。取り敢えず、副総監宛にメールしておこう。笠置さん、作業用のPC、ある?」
「これです。」と、笠置は自分のPCを起動し、ネットに繋ぎ、警視庁テロ対策室の宛先を指定しておいた。すかさず、久保田管理官は文章を書き、システムの検索結果をテロ対策室に送った。
「お邪魔さま。」「管理官。夜中ですけど・・・。」「村越警視正が待機しているよ。今は、アメリカは夕方かな?」
久保田管理官と夏目は、慌ただしく出て行った。
「2度寝する?」と笠置が言うと、榊も高山も賛成した。
まだ、夜明けには、時間があった。
―完―


