========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。
 夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。コロニー被爆の疑いで3日間隔離された。
 夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。
 笠置・・・夏目リサーチ社員。
 高山・・・夏目リサーチ社員。
 榊・・・夏目リサーチ社員。
 久保田管理官・・・警視庁テロ対策室所属だが、引きこもり犯人との交渉人を勤めることもある。EITO初代司令官。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 ※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
 夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。


 午後10時。浅草、浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
 笠置以下、古参のグループが作業に入った。
 作業。それは何か、マッチングシステムによる、『面割り』だ。
 表向きの市場調査は、『通行人調査』だ。カウンターをカチカチ。あれである。
 このとき、隠しカメラで通行人を撮影している。
 遠隔操作の為、カチカチのバイト君には分からない。
 幸い、件のスパイは、『市場調査の報告書』の整理作業を行っていたので、このカラクリは分からない。
 夏目リサーチには、市場調査の際に得られた膨大なデータが集まっている。
 公安またはEITOの要請で、『市場調査』の振りして監視・張り込みが行われることもある。
 誰も、カチカチやっている人間に『盗撮』されているとは思わない。
 言わば、『くろこ』だから。
 EITOからの要請で、笠置、高山、榊は、警視庁が開発した『顔認証システム』で、前科のある者のデータや、運転免許証のデータ、お名前カードのデータと照合していた。
 この大事な作業は自動で行われるものの、やはりオペレータが必要となる。最終チェック・確認だ。
 「あった!!」榊の声に、皆が集まった。
 今オリンピック記念公園にある駒沢球場で、ドリフト・アイスこと小谷配下の集団が闘った時の防犯カメラの映像と、EITOの原田警部が仕掛けた隠しカメラの映像、前科のある者のデータや、運転免許証のデータ、お名前カードのデータ、それに今まで顔認証システムであぶり出された履歴データが、同時に、1人の男を割り出した。
 名前は、茅野勇作。詰まり、決戦の時に『見張っていた』人物が、集団食中毒事件とも関連した人物ということになる。
 笠置は、警視庁の久保田管理官の部屋に電話した。
 今日は、繋がった。
 「よくやってくれた。EITOと村越さんには、私から連絡しておく。被疑者は既に逃亡中だが、改めてガサ入れを行う。」
 笠置が受話器を置くと受話器に繋がった自動録音機が停止した。
 「笠置さん。茅野は、『先輩幹』と呼ばれていた、『ダーティー・ブランチ』の配下、『枝』かも知れませんね。」と榊が言った。
 「付属データには、2課で昔捕まえたことがあるが、証拠不充分で不起訴になった、とありますね。仮釈放の時の身元引受人かな?『ダーティー・ブランチ』」
 「うん。あり得るね。」そう言ってすぐ『でんわ、いそげ!』と駄洒落を言って、笠置は、再び久保田管理官に電話をした。
 「成程。本庄さんに尋ねてみよう。案外、早く見つかるかも知れないな。」
 笠置は、今度は優香に電話した。
 「ありがとう。助かるわ。夏目にも報告しておきます。」
 笠置達は、他の案件の『リサーチ』に取りかかった。
 以前より広い、分室は、仮眠室もばす・トイレも給湯室も食堂もある。
 だが、元来『仕事人間』の彼らは、いずれも使ったことがない。10人のメンバーは、シフトで交替、午後10時から午前7時までが勤務だ。元警察官もいれば、元会社員もいる。
 まだ、仕事は始まったばかりだ。
 ―完―