下らない話

 こんな風に想える相手、また見つけられんのかな?

 夏休み中、樹からの誘いを何だかんだ躱しながら過ごした。
 地元の夏祭りでプチ同窓会みたいになった時、三週間ぶりに会った樹は俺を見つけるなり無邪気に抱き付いて来た。

「朝比奈ー‼︎久しぶりー」
「痛ぇ‼︎何だよお前」
「相変わらず仲いいな、お前ら」
「はぁ?良くねーよ別に」
「何でだよー?仲いいじゃんかよー」

 必死で新しい恋をしようとしている俺には酷でしかない。
 剥がそうとしても纏わりついてくる樹にヘッドロックをかます。

「拓海‼︎久しぶり」
「おぅ」
 元カノが樹の首に回した俺の腕を剥がし、身体で樹をどかす様にして押した。
「元気だった?」
「まあ、普通に」
「また背伸びたんじゃない?」
「あぁ、今178とかかな?」
「彼女できた?」
「できてない」
「また付き合わない?」
「…いや、それはないな」
「何でー?」
「地元に兄弟いっぱいになりそう」
「何それ、めっちゃ失礼ー」

 元カノはケラケラ笑った。
 樹はいつの間にかいなくなっていて、他のグループに混じって喋っていた。

 元カノが別の所に行ったタイミングで俺は家に帰った。
 擦り寄って来た元カノに何も感じなかった。
 前は、あんな風にされたらいつも身体が勝手に反応していたってのに…。

『朝比奈どこいるのー?』
 樹からLINEがきた。
『家帰った。寝る』
 腕に残った樹の感触。匂い。声。

 すぐに眠れる訳もなく…。目を閉じても浮かぶ笑顔に幾度となくため息を吐きながらやがて眠りに落ちた。