下らない話

 樹にとって男同士の恋愛なんてものは「あり得ない」絶対に知られてはいけない想い。

 だからせめて、傘の中の時間だけは奪わないでくれと願っていた。

 彼女の傘に入って二人で帰って行く後ろ姿を何度も見送った。

 その度に胸の奥がズキズキと痛む。


 別にこれが初恋な訳じゃない。
 今まで好きになったのも、付き合ったのも、キスしたのも全部女だった。
 男しか好きになれない訳じゃないし、俺の中身が女な訳でもない。

 中3の夏休み、受験勉強の息抜きと称して男五人で集まって裕太の兄貴のAV鑑賞をしていた。

 最初はニヤニヤしていた俺たちだったけれど、次第に無口になって落ち着かなくなっていった。
 クライマックスを直視できず目を逸らした先にあった樹の表情(かお)

 見た瞬間、身体に電流が走りゾクゾクと震えた。
 俺だけがみんなと違う意味で達していた。

 その場の気の迷いだと思っていた。
 そうであって欲しかった。
 頭でいくら否定してみても、心と身体はあの日から樹を求め続けている。