下らない話

 正直この辺の俺の記憶は曖昧で…
 気付いたら病院のベッドの上にいた。
「…朝比奈、大丈夫か?」
 学年主任の中町が俺の顔を覗き込んでいた。
「たつ…樹…樹は…」
 中町の腕に縋り付く俺の手は尋常じゃない程に震えていた。
「…まだ何とも」
「何で…なん…」

 非常扉を開くとホテル側に通知がいくシステムらしく、スタッフの迅速な対応により俺たちは直ぐに病院に運ばれたのだそうだ。

 転落時の目撃者がいなかった事もあり、俺と樹は体調不良により離脱したと説明された様だ。

『お前ら二人揃って体調不良って…仲良すぎかよ‼︎大丈夫なんか?』

 返信なんてできなかった。笑えねぇから。

 樹に会いに行きたかったけれど、アイツは俺とは別の閉ざされた扉の向こう側にいたから無理だった。

 一睡もできないまま夜を明かし、俺はただ祈るしかなかった。

「樹の意識が戻った」と明け方看護師が知らせに来てくれた。