下らない話

 3時間後、カラオケの前で解散した。
「じゃ、また来週な」
「何か…悪ぃな」
「ニヤニヤしながら言ってんじゃねぇよ」
「まぁ、報告はするから。明日にでも」
「お前もニヤニヤしてんじゃねぇよ」
 裕太に続いて三輪もニヤつきながら声をかけてきた。

 俺と樹の二人で駅に向かう。
 夕飯時のせいなのか、暑さのせいなのか…
 線路沿いの細道には人の気配が全くない。

 ミキの俺へのアプローチが凄かったが、脈無しだと分かると早々にターゲットを裕太に変えた。
 アヤカは初めからダイソンが気に入っていた様で、無駄に良い声で歌ったラブソングで完落ち。
 樹とずっと喋っていたリナは一度トイレに行き、戻って来てから明らかに様子が変わり… 気付けば三輪の隣で三輪の上手くもない歌にうっとり聴き入っていた。
 よくよく考えてみると同じタイミングで席を外していたな。
 その時に何かあったんだろう。

 樹と二人きりの帰り道。
 俺的には最高の流れなわけだが、樹だけが貧乏くじを引いたみたいな状況に少し気が引ける。

「樹、リナの事良かったのか?」
「え?」
「仲良さげだったじゃん」
「別に普通に喋ってただけだけど」
「……余りもん同士、手でも繋ぐか?」
「バーカ。何言ってんだよ」
「何だよ冷てぇーヤツだな」
 笑いながら大袈裟に項垂れてみせる。
「し、しょうがねぇな‼︎向かい側から人が来るまでだからな」
 そう言って樹が俺の手を握った。
「ははッ」
「何笑ってんだよ」
「お前も笑ってんじゃん」
 暗くなり始めた真夏の夜の、わずか7秒の奇跡。
 勢いよく振り解かれた汗ばんだ手。

 ジジイ‼︎お前の顔は一生忘れねぇからな‼︎‼︎