下らない話

「…マジか」
「引いた?」
「…いや。お前がそうやって笑ってられんのが一番だと思うわ」
「何クセェ事言ってんだよ」
 そう言って沙月が俺をぶっ叩く。小せぇくせに怪力だ。
「痛ぇな…バカ(ぢから)
 涙には敢えて何も触れない。

 一ヶ月ぶりに見た笑顔の沙月と2プレーやり終えた帰り道、沙月から報告を受けた。

 あの日決別した8歳上の元彼と、結局一緒に生きて行くと決めた沙月。
 お互い未練タラタラで一生死んだ様に生きて行くくらいなら、こっちの選択の方が百万倍マシだと思う。

 世間的にはイカれてる話なんだろう。
 だけど俺は沙月の決断に引いたりはしない。
「てかさ、兄貴と結婚するはずだった相手は大丈夫なのかよ?」
「まぁ、元々お互い様って感じだったからさ…」
「え?」
「相手、同性愛者だったんだよ。だから元々形だけの結婚のつもりだったんだって」
「…」
 道理で展開が早かった訳だ…。

 決してオープンには出来なくても、お互い大切な相手と生きて行こう。
 そう話し合って二人の関係は『婚約者』から『同志』へと変わったのだそうだ。

「じゃん‼︎」
 効果音と共に俺に見せてきた携帯画面には『姉貴♡』と表示されていた。
「え?どういう事?」
「兄…道隆(みちたか)に紹介して貰ったんだ。めちゃくちゃ仲良し」
「んはッ」
「何だよ?」
「いや、すげぇなお前…」
「何が?」
「いや。…頑張れよな」
「拓海…」
「んぁ?」
「お前も頑張れよ」
「…いや、俺は」
「性別ごときで諦めんな」
「性別ごとき…って」
「あたしが言うと重みあんだろ?」
「…」
「黙んなよッ」

 さっきと同じ場所をぶっ叩かれた。
 痛ぇ…。
 痛すぎて泣けてくるわ…。