下らない話

 そっと樹を抱き寄せると、樹は俺にしがみついてきた。
 窓からはぬるい風が時折吹いて、胸に顔を埋める様にして目を閉じる樹は短く熱い息を吐く。
 汗ばむ俺はただ静かに、樹を抱いたままきつく目を閉じていた。

 暫くすると弱々しい息を漏らしながら俺の脚の間に左脚を差し込んできた。
「…ひなぁ」
「ん、どうした?」
 返事はなかった。寝言だったみたいだ。

 首元にスポドリのペットボトルを当ててやると、また小さな息を漏らし俺の胸に頭を擦り付けてきた。
 温めてやりたいと思っただけだった。
 意に反した自分の身体の反応に嫌悪感と罪悪感が生まれる。

 身体を離そうとすると、しがみついていた樹の腕に力が入った。
「樹?起きてるのか?」
 やはり返事はなかった。

 首元にペットボトルを置いたまま手を離し、樹の髪を撫でた。手に熱気が伝わってくる。

 身体の向きを変えて樹が埋めていた顔を上げた。
 目を閉じて苦しそうに息をする樹の顔に俺は…。