高校が別になってから1年と1ヶ月ちょっと経った今でも、こうやって俺たちは変わらずしょっちゅう顔を合わせている。

「あ、ちょ…やめろよ悠真‼︎」
 腹ばい状態で漫画を読んでいた幼馴染の染めたてのホワイトベージュの髪をぐちゃぐちゃにしてやった。
(しゅう)ちゃんさ、せめて制服着替えてから来いよって…」
「はいはい、すいませんごめんなさーい」
 そう言って面倒くさそうにワイシャツとズボンを脱ぎ捨て、長身の幼馴染は黒いスリーブレスシャツとボクサーパンツ姿になった。
 そして長い腕脚に纏ったしなやかな筋肉を見せつける様にして、再びベッドに腹ばいになる。

 やめてくれよ……。

「……いつ来たの?」
「えー…40分くらい前かな?」
「LINEしてくれれば良かったのに」
「悠真には悠真の付き合いってもんがあんだろ?」
 俺は修ちゃんに背を向けて着替え始めた。
「LINEくれた方が良かったよ」
「どした…何かあった?」
「友達に相談があるって言われてついて行ったら、知らない人がいて二人きりにされた」
「……女?」
「うん」
「へぇー……何、(こく)られちゃったりとかした訳?」
「……」
「されたんだ?」
「……いや」
絶対(ぜってー)されてんじゃん」
「されたけど別にもう断って終わった話だし」
 少し口調を強めて振り返ると、肘をついて横寝状態になった修ちゃんと目が合った。
「何で断った?ブスだった?」
「別にブスなんかじゃなかったよ」
「じゃあ何で?もったいない…」
「俺は、好きな人とじゃなきゃ…つ、付き合うとか……そういうのは嫌だし」
「何、いんの?好きな人」
「いるよ…いるに決まってんだろ?俺は思春期真っ只中の正常な10代男子なんだから」
「へぇー……じゃあさっさと告って付き合えば?」
 そう言って修ちゃんはまた腹ばいになって漫画の続きを読み始めた。

 俺も再び背を向けてベルトを外す。
 足元に落ちたズボンを蹴り飛ばし部屋着のハーパンを探してしゃがみ込んだ。

 簡単に言うなよ。
 人の気も知らないで……。