私たちの関係に、名前はまだない。

「それは、とても災難でしたね……お姉さんは、それで良いんですか?」

 お見合いしてから婚約はしたけれど、私たちは、まだ結婚式の話もしていないし……キャンセル料だって何も発生しない。

 そうしたいと言った彼の気持ちを思えば、致し方ない理由だし、私側には不満は無かった。

 お世話になった仲人も居て仲が良い親同士は、婚約解消に非常に残念がってはいたけど、それは、もう仕方ないことだ。

 私たちには、ご縁がなかった。

「良いというか……その、事故に遭ったという彼女は、私と同じ年齢らしいの。とてもお気の毒だと思うし、大変な時に傍に居たいという彼の気持ちも、尊重してあげたい。婚約解消だって仕方ないと思うし……意識が早く戻れば良いと願っているわ」

 人が不幸に遭った話を聞いて、自分勝手な理屈でなんて怒りたくない。

「じゃあ……あのっ……」

 七瀬くんは何かを言いかけて、それはあまり良くないと思ったのか、片手を口に当てて口籠った。

 そんな彼を見て、私は若いのに、思慮深い子だと思った。私が高校生の時に、それが出来たかは分からない。