私たちの関係に、名前はまだない。

 私がそう呟けば、隣の彼は声が聞こえたのか、こちらを見た。そして、彼の顔を真正面から見て、私は言葉も出ないくらいに驚いてしまった。

 そこに居たのは、高校時代の私が実らなかった恋の相手……七瀬瑞樹くんだったからだ。

 短い黒髪に、端正な顔立ち。バスケ部で背は高くて、いかにもスポーツしている高校生という、ガッチリとした筋肉質な体型。

「あ……あの、もしかして……浮田萌音っていう、妹が、居ます? すごく、良く似てて」

 高校生七瀬くんの言葉を聞いて、私はなんと言うべきか戸惑った。それって、高校時代の私のことだ。

 過去の彼に、こんなうらぶれてしまった姿を、そうだと認識されたくない。

 声も何もかも、あの時のまま、そのまま……この人は、高校生の頃の七瀬くん本人で間違いない。

 彼は二年生の途中、両親の仕事の都合で、引っ越してしまった。私はそれ以来、今まで会ってはいない。

 私は今晴れているのに、彼が傘を差しているという視覚的な事で、今のこの事態が異常であることに気がついているけど……私はベンチに座っていて、その上には、小さな屋根がある。