私たちの関係に、名前はまだない。

「電話をかけて、訳を聞こうとした。けど、もう良いかって、うんざりして言われたの。親に言われてお見合いをしたけど、私のことを、ずっとつまらないと思っていたんだって、お前なんか、どう考えても女に見えないって……婚約解消したのは、違う女性と上手く行ったから、私はもう要らなくなったから……面倒だし良い話の嘘をついて、婚約解消したんだって……これ以外にもいっぱい言われた……酷いこと……たくさん」

「お姉さん……」

 七瀬くんは泣き崩れた私の背中を、大きな手でゆっくりさすってくれた。

 あ。この七瀬くん私のこと、触れるんだ……なんだか、そのことが私にはとても意外だった。

 どう考えても、過去と未来の私たちなのに……不思議。

「それは……婚約中の不貞が理由で、しかも婚約解消の理由に嘘をついたってことで、相応の慰謝料を取れます」

「え?」

「すぐに、弁護士に連絡しましょう……あ。これ、使ってください。叔父の弁護士事務所です。身内だからって良く言うこともないんですが、人を助けたくて弁護士になった熱い人で、良心的な価格で有名です」