私たちの関係に、名前はまだない。

 ……そして、私は高校生の時に好きだったその人と、話をしてしまうという不思議な体験を終えた。


◇◆◇


「あ。お姉さん。また会いましたね……え。どうか、したんですか?」

 涙を堪えきれずに、ハンカチで目を押さえていた私が視線を上げれば、そこに居たのは、傘を差し制服姿の七瀬くんだった。

 彼は心配そうに、顔をグチャクチャにして泣いてしまっていた私の顔を覗き込んでいた。

 仕事中は耐えたけど、バス停で待っている時間は、気が抜けてしまった。

 あ。また……また、彼と会えたんだ。あの時も、過去だとしても、好きな人に会えて……嬉しかった。

 今ではもう、彼は何処に居るかもわからなくて、二度と会えない人だとしても。

「なっ……っ君……あ。雨の日に良く会うね」

 私が涙目で笑うと、七瀬くんは眉を寄せた。

 なんだか、ひどい顔をしていたのかもしれない。そして、私はそれを嫌だと思った。

 不思議なものだ。過去の好きな人だけど、七瀬くんの前では少しでも良く見られたい思いがあって。

 私はまだ七瀬くんのことを、好きな人から普通の人に戻せていない。