私たちの関係に、名前はまだない。

 パシャパシャと水の跳ねる音がして、そして、彼はバスに乗り込んだのか、姿はふっと見えなくなってしまった。

 彼が居なくなってしまって、寂しくないと言えば嘘になる。けれど、ここで呼び止めて、どうするの?

 私は七瀬くんのことが、本当に好きだった。

 あまりにも見すぎていたせいか、目だって良く合っていた。けれど、別に嫌な感じはしなかった。嫌われては、いなかったように思う。

 ふとした瞬間、絡み合う視線。クラスの喧騒は、何も聞こえなくなった。

 だから、こんな願望のような不思議な幻を、私は傷ついた時に見てしまったのかもしれない。

 七瀬くんが二年生で転校してしまう時、私は勇気を振り絞って彼に連絡先を聞こうとした。

 必死でニ階から名前を呼んだのに七瀬くんは、笑顔で大きく手を振って行ってしまった。

 彼に私へ少しでも気持ちがあれば、立ち止まってくれたと思う。けれど、あっけなく行ってしまった。

 そこで……追いかければ良かったのかもしれない。けど、そんな勇気、高校生の私には出せなかった。