殺人、はじめました。

 「おっさん、次」
雨歌からもらったフルーツを頂いたあと、私は上機嫌でオフィスに入った。
『スナイパー』本部は三つに分かれていて「トレーニング」・「オフィス」・「娯楽施設」になっている。
普段よく使うのが「オフィス」だ。娯楽施設はミッション終了後しか使えない。
娯楽施設にはレストランやスパなどがある。「トレーニング」は研修のやつらが使う部屋だ。
ミッションを体験する前に、トレーニングするのだ。私は一発でミッションだったのだけど。
「愛藍、今日は調子がいいじゃないか」
「雨歌にフルーツもらったの。なんか悪い?」
「じゃあ、早速ミッションの説明をしたいと思いまぁす!」
おっさんの鼻歌がウザいが、今日は機嫌がいいので我慢しておこう。
「…早く」
「今日はな、親子二人を殺してほしいんだよ」
「子供も、っていうことね?何歳ぐらいなのよ?」
「子供は42歳、母親は67歳だ。同居してるらしい。42歳の子供は男だ。無職らしい」
「親の年金を頼ってるキモいマザコンか…。ちょっと殺りやすいかも」
その子供の頭はどうなってるんだ?同居するのは別に変じゃないかもしれないが、なんで無職?
母親の年金に頼るのは、いいマザコンじゃないわよ。
「目の前で説教してやりたいんだけど、今回のターゲット」
「すればいいじゃないか」
おっさんが真顔で言った。少し驚く。
「はぁ?死ぬ間際に殺し屋の説教なんか聞く人、いる?いたらヤバいわよ、いたら。」
「愛藍。殺し屋はな、人を『殺す』お店『屋』なんだよ。分かるか?」
「何言ってるか分かんない。おっさん、殺し屋は殺し屋だから」
おっさんが深いため息をついた。今日のおっさん、変だけど。昨日、変なドラマとか観ちゃった?
インスピレーション、受けてる⁉
「ちょっと落ち着いたら?生え際の白髪、目立ってるよ~?」
「なんだと⁉ごめん。おっさん、じいちゃんになってきたみたいだ。」
「元々ジジイだ、アンタは」
私の冷た~いツッコミを受けて、ますますしょげたおっさん。
ただ、今日は機嫌がよいので、これ以上言うのはやめてあげますわ~、オホホ。
「愛藍~。一回は優しくしてくれないか~このおじいちゃんに」
「ミッションの詳しい情報」
「ほいほい~!オッケー☆⌒d(´∀`)ノ」
「うわ~!可愛くないよ。サムイヨ、おっさん」
その後、おっさんの長い説明を終えた私は、赤色のフェラーリの運転席に乗った。
「行ってくるわね。今日は自車で殺りたいの。」
フェラーリのエンジン音が、遠く響いた。