ミッションの打ち合わせ場所で。
「愛藍。よくやった」
「は?私、ミッションを『失敗した』って言ってるんだけど」
私の言葉とは裏腹に、おっさんの顔はどことなく明るい。顔面が発光している。
「愛藍、すまなかった。今回のターゲットは、愛藍と同じ目に遭った不幸な奴らだ」
「おっさん。それって『嫉妬』っていうんだよ」
「嫉妬とは違うんだ。うらやましいっていうか。いいなっていうか」
「だ・か・ら!それを人間は嫉妬っていうの!分かる?病院行く?」
どうせ、おっさんは若い子たちに嫉妬してたんだ。そうに違いないし。
「俺、耳が悪いんだよ。」
「そうよね~。気づいてたんだ、私。行ってきな。病院カモンカモン」
本当に耳が悪いんだった、このおっさん。よかった。私の勘は鋭かったようだ。嬉しい。
「次のミッションのことを言いに来たんですけど」
雨歌が呆れたように言った。おっさん、ダメだぞ。雨歌を怒らせちゃ。
「あっ、ごめん。」
「珍しいな。愛藍が人に謝るなんて。彼氏ができたのか?写真、見たいなぁ」
「おっさん黙れ。で?雨歌、早く言って?おっさんのことなんか気にしないで~」
「う、うん。」
私の圧に押されたようだ。ごめんね、雨歌。怖がっちゃダメよ。
なぜ、雨歌がミッションの詳細を知っているかというと、ターゲットは、雨歌の知人らしい。
いかにも復讐系か。でも、今回、雨歌はミッションに参加しないらしい。
雨歌は結婚するのだ!写真は恥ずかしいから見せられないと言われたが、どんな奴かな。
めっちゃ気になる。最低な奴だったら殺す。脳を引きずって殺す。
ともかく、雨歌は結婚相手といちゃラブデートということで、お休み。新婚っていやね。
どうせ、三年ぐらい経ったら喧嘩ばっかりになってると思うけど。
「ー今回のターゲットは、私の親友の富田華恋と相田濃湖です」
「へぇ、親友ね?雨歌はあの子たちに恨みがあるっていうこと?」
「そうだよ、愛藍ちゃん。いじめられたんだ、親友なのに」
そっち系か。よくある話だ。最初は親友だったのに、些細なことがきっかけでいじめられるようになったー。
雨歌もそういう過去があったんだ。よし、決めた。そいつら殺しに行こう。
「許せないわね。じゃあ、こっち(殺人)は任せて。雨歌はクソ旦那と遊びに行きなさいよ!」
「ご、ごめんなさい。愛藍ちゃん。でも、戻ったらフルーツ買ってあげるから許して。」
ふ、フルーツですって!桃もいいわね。でも、ブドウも捨てきれない!
「フルーツの盛り合わせにしてあげるよ。フルーツ屋さんの一番高い、アレ」
「雨歌!ありがと」
「フフッ。可愛いねぇ~子猫ちゃん」
雨歌は私のことを猫だと思っている。確かに容姿も似ているかもしれないが、よく考えたら性格も似ている。
私って、思いのほか猫なのかも。