殺人、はじめました。

 「おっさん?まだ終わってないのぉ?」
プレッシャーをたっぷりかけながら私は言った。
「名前は突き止められたけど、住所はまだ…」
あの人たちの名前は実の娘である私も知らない。というか、知りたくない。
でも、復讐をするために知らなくてはいけないことなので、教えてもらうことにした。
おっさん、なかなか早いな。
まぁ、住所がなくちゃ意味がないんだけど。
「名前、教えて」
「佐々木健介と佐々木蘭菜だ。」
健介の方は普通の名前だ。蘭奈は、私ほどキラキラネームではないが、珍しい。
やっぱり、愛藍の方がイケてるんだぜっ、諸君!
とは言っても、私の名前・「アラン」は私が自分で考えた名前だ。
私も小さい頃は鈴木と同じように、『名が無き子』だった。
施設に引き取られた8歳のときに、偶然見たアニメ(?)のようなものに影響されて「アラン」にしたということだ。
以上、私の名前についての解説でした。ご清聴、ありがとうございました。
「へぇ、平凡な名前ね!せっかく調べたのに残念よね」
「愛藍…煽りすぎたな」
おっさんが額に手をあてた。
「おっさんもあの人たちの仲間じゃない。自分の子供捨てちゃう系の人間。」
私は明るく言ってみせたけど、ぎこちなくなったようだ。
二回目の沈黙が流れる。
「だよな。俺、悪い人間だ。世界一最低なんだ。ああああ」
「ちょっと、おっさん!落ち着いてよ」
「落ち着くことなんかできん!今すぐ包丁で自分の首を切ってやる‼」
「何言ってんのよ」
私はおっさんを冷たく突き放して言った。おっさんが床に転がる。
幸い、怪我はしていないようだ。
「おっさんが死んだら、ここに入った意味がなくなる。復讐ができなくなる」
「愛藍、どうしてそんな人間になっちまったんだよ…」
「私、こういう人間になる運命なの。親に大切にされず育った子は、こうなるの」
凶悪犯も、泥棒も、身内を調べたらヤバい奴ばかり。
ヤバい環境でヤバい人間に教わったことはいつしか自分に帰ってくる。
私はふざけていない、本当のことだ。
「ーだから、私は『スナイパー』特待生10級・佐々木愛藍なの」