殺人、はじめました。

 「あんたの脳みそ、二つに割ってあげる」
私はそう言うと、イスから飛びおりて、坂道のほうに近づいた。
坂道が雑居ビルの屋上に行こうと、階段めがけて走り出した。
「あれっ、逃げちゃうんだ」
私は階段ではなく、外から屋上に向かうことにした。
二階のベランダに足をついて、屋上のフェンスを手で掴む。
先回りができた。
「なんで先に!」
坂道がパニックになって、地面に座り込む。ぐったりしたようだ。
「え~。もう降参?つまんないなぁ」
私が煽った次の瞬間、坂道が私の頭を狙ってきた。
しゃがんで避ける。
「なかなかすごいじゃん。」
「これでも、元警察官だ…」
再び、私の頭を狙って、銃を撃ちまくる坂道。
でも、私は坂道の銃を避けて、避けて、避け続ける。
坂道は、フェンスの淵に足をついた。
一回、強い蹴りを入れた。坂道が血を吐く。
血がつくと面倒なので、私は血が当たらないように、必死で血を避ける。
フェンスを壊そうとするが、壊せない。
不意に、坂道がバランスを崩した。坂道の足が、宙にぶらさがる。
私は、ゆっくりと坂道に歩み寄る。
そして、ハイヒールで坂道の手を、コツンと、小突いてやった。
ハイヒールの先で、坂道の頭を踏み潰す。
坂道の体が、宙に浮かんだ次の瞬間、鈍い音をして地上に落ちた。
坂道の頭から血が滲み出る。
あ、もう死んだな。ー坂道同助、死亡の瞬間だった。

「ごくろうさん!」
おっさんが話しかけてくる。
「変装、用意してくれてありがと。マジで助かった。」
おっさんが胸を張る。今回ばかりは助かった。
「警察は、『あの顔』の大学生を探してるっぽいから、大丈夫だな」
「多分ね。」
私が変装を解くところは、誰も見ていないから大丈夫だろう。
念のため、車でやったことに悔いはなかった。
変装は、正直に言うと、超苦しくて、超きつかった。