その後も準備は着々と進んでいったが、開店前に決めておかなければならない重要事項がまだ残っていた。志だ。この美容室がなんのために存在するのか、誰のために存在するのか、何を目指すのか、それを決めなければならない。それは夢丘とわたしの想いを込めたもので、それによって美容室に集う全員が心を(いつ)にするものでなければならない。〈志=サロン・コンセプト〉を決めるための話し合いを夢丘と続けた。

「先ず、お客様の幸せだね」

「そうですね。それから、この店で働く美容師の幸せも盛り込みたいですね」

「あと、自分たちを支えてくれる人たちへの感謝もだね。神山不動産、神山VC、西園寺建設、そして、美容ディーラーやメーカーの方たちがいなければこの美容室は成り立たないんだから」

 夢丘が大きく頷いた。

「では、これでいいかな?」

 マジックで書いた紙を夢丘に向けた。

《サロン・コンセプト》

 ・お客様の素敵と笑顔を最大限に!
 ・ステークホルダーへの感謝を最大限に!
 ・美容師の夢と希望を最大限に!

 常に心を磨き、技術を磨き、お客様とステークホルダーと美容師の明るい未来を創造します!