1週間が経った。またも天気は良くなかった。それでも、厚い雲が太陽を遮ってはいたが、雨粒は落ちていなかった。

「雨、のち、くもり、のち、晴れ」

 店長と会う時間には晴れているようにと空に願掛けをして、パンをトースターに入れた。

        *

 出かける時間になっても電話はかかってこなかった。
 今日はキャンセルはないようだ。
 空はまだ曇っていたが、「よし!」と気合を入れて、心の中の暗雲を吹き飛ばした。

        *

 喫茶店には待ち合わせの20分前に着いた。
 夢丘は席に座っていた。
 周りに人のいない一番奥のテーブルだった。
 わたしは胸の前で手を上げてから近づき、彼女の横に座った。

        *

 店長が顔を見せたのは、ちょうど5分前だった。

「待たせた?」

「いえ、ちょっと前に着いたばかりです」

「そう」
 
 それだけ言って座ったが、その表情から読み取れるものは何もなかった。

 コーヒーが運ばれてくるまでは3人とも無言だった。こちらから話を向けるわけにもいかないし、店長も切り出すタイミングを計っているのかも知れない。水を何度も飲んで、視線は入口の方に向けていた。

 店長がコーヒーに砂糖を入れた。ブラウンシュガーを一欠片(ひとかけら)だったが、前回はブラックで飲んでいたので、もしかしたら彼の脳が甘さを要求しているのかもしれない。
 ということは、スムーズな話ではないということになる。嫌な予感がしたが、それをコーヒーで胃の中に押し込んで、彼の口が開くのを待った。