* * *
暗がりに鬼火がいくつも浮かぶ。
場所は神宮寺家が代々祀られている墓場だった。一つの墓に収まらず、家族ごとに墓を作られている。この一帯の墓はすべて神宮寺家に関わる者たちの墓だった。
夜が静まり返った頃、鬼火がゆらりと宙を舞う。
それに恐怖心を抱きながら、札を手にしている春代に対し、紅蓮は呆気に取られていた。
「警戒する必要はない」
「ですが、鬼火があんなにも浮いています」
「あれは魂の残り香だ。鬼火ともいうが」
紅蓮は春代の手を繋ぎ、迷うことなく、ある墓を目指していく。鬼火が出ている原因の墓は真新しいものだった。
「刻まれている名を見て見ろ」
紅蓮は鬼火のおかげで明るくなっている墓石を指さした。
春代は紅蓮の指示に従う。
この場では震えながら札を手にする春代よりも、あやかしの紅蓮の方が正しい。墓石に刻まれたばかりの名を見て、春代は目を見開いた。
「……お母様」
墓石には神宮寺セツの名だけが刻まれていた。
それは供養塔のようにも見えた。
四十九日を待たずして、セツの骨は墓にしまわれた。それが鬼火の原因なのか、わからない。しかし、セツの未練が鬼火となっているのは間違いなかった。
「鬼火はどのように治めればよいのですか」
「放っておいてもいい。早くに治めたいのならば、未練の声を聞いてやればいい」
「未練の声ですか?」
春代は首を傾げた。
札を張ることしか春代にはできない。
紅蓮は鬼火の一つを手で掴んだ。
「覚悟があるのならば、触れてみればいい」
紅蓮が触れたところで未練はわからない。
人でなければ鬼火の未練は伝わらない。
……覚悟ですか。
セツの思いを知りたいと思っていた。
死して鬼火となるほどに残した強い未練とはなんなのか。春代はそれを知る為に紅蓮が捕まえている鬼火に手を伸ばした。
暗がりに鬼火がいくつも浮かぶ。
場所は神宮寺家が代々祀られている墓場だった。一つの墓に収まらず、家族ごとに墓を作られている。この一帯の墓はすべて神宮寺家に関わる者たちの墓だった。
夜が静まり返った頃、鬼火がゆらりと宙を舞う。
それに恐怖心を抱きながら、札を手にしている春代に対し、紅蓮は呆気に取られていた。
「警戒する必要はない」
「ですが、鬼火があんなにも浮いています」
「あれは魂の残り香だ。鬼火ともいうが」
紅蓮は春代の手を繋ぎ、迷うことなく、ある墓を目指していく。鬼火が出ている原因の墓は真新しいものだった。
「刻まれている名を見て見ろ」
紅蓮は鬼火のおかげで明るくなっている墓石を指さした。
春代は紅蓮の指示に従う。
この場では震えながら札を手にする春代よりも、あやかしの紅蓮の方が正しい。墓石に刻まれたばかりの名を見て、春代は目を見開いた。
「……お母様」
墓石には神宮寺セツの名だけが刻まれていた。
それは供養塔のようにも見えた。
四十九日を待たずして、セツの骨は墓にしまわれた。それが鬼火の原因なのか、わからない。しかし、セツの未練が鬼火となっているのは間違いなかった。
「鬼火はどのように治めればよいのですか」
「放っておいてもいい。早くに治めたいのならば、未練の声を聞いてやればいい」
「未練の声ですか?」
春代は首を傾げた。
札を張ることしか春代にはできない。
紅蓮は鬼火の一つを手で掴んだ。
「覚悟があるのならば、触れてみればいい」
紅蓮が触れたところで未練はわからない。
人でなければ鬼火の未練は伝わらない。
……覚悟ですか。
セツの思いを知りたいと思っていた。
死して鬼火となるほどに残した強い未練とはなんなのか。春代はそれを知る為に紅蓮が捕まえている鬼火に手を伸ばした。



