無能の生贄は鬼と契りを交わす

 ……そういうものなのでしょうか。

 春代は首を傾げる。
 陰陽師として活躍をしている静子ならば、紅蓮の姿を見つけられそうな気がした。

 ……恥ずかしいですが。これも任務の為です。

 気合を込めて、手を繋ぐ。

 顔から火が噴き出しそうなくらいに真っ赤に染まっていた。

「緊張しているのか?」

「殿方と手を繋ぐのは初めてですので」

「そうか。それはよかった」

 紅蓮は楽しそうに笑った。

 その会話を聞かされながら先導をする静子の心は嫉妬で狂いそうだった。


* * *


「ここですわ」

 静子は古びた小屋の前で足を止めた。

 嫌な空気が漂っているのを春代も感じる。

「持ち主によりますと、大きな首だけの妖怪がでるそうです」

 静子はそう言いながら、紅蓮の後ろに隠れた。

「わたくしの力では対処できませんでしたの」

 静子は情報を付けたす。

 案内役に抜擢されたのは、紅蓮と接触をする為に立候補したからだ。実力で選ばれたわけではない。

「大首か」

 紅蓮は妖怪の名を当てた。

 滅多に姿を現す妖怪ではないものの、現世と幽世ん境界線を乗り越えてしまったのだろう。嫌な気配がするのは大首のせいではあく、境界線が曖昧になっている場所に立っているからだ。

「大首。いるのだろう。出てこい」

 紅蓮は声をかける。

 すると小屋の中から2メートルはありそうな生首が飛び出してくる。江戸時代の遊郭を連想させる髪形と既婚者を意味するお歯黒の女性の生首だ。

 その巨大さに静子は数歩下がってしまった。

「紅蓮の坊やかい」

 大首は紅蓮を見下ろして笑う。

 にたにたと笑い、なにを考えているのか、わからない。

 ……あの大きさの妖怪に勝てるのでしょうか。

 春代は不安になってしまった。