========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
 中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。

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 午後1時。東山署。取り調べ室。
 副署長の船越が取り調べをしている。
 「家事の分担?君は、何を分担していたの?」
 「掃除です。昨日は、庭の掃除をする予定でした。でも、部活で遅れてしまって、掃除のことも忘れていました。そしたら、母が怒り出して。自分で言い出したことは、やりなさい、って。」
 「そらあ、もっともやわなあ。そんで、掃除したん?」
 「明日やるよ、って言ったら、もっと怒って。拭いてた皿をテーブルの上にほって。」
 「高い皿か?」「いや、親戚に昔もろた、セットのやつ。」
 「で、その皿で、お母さんを叩いた、と。縫う程深くはないが、傷口はすぐには塞がらん、って医者は言うてる。あ。部活、何やってるの?」
 「野球です。」「野球?ポジションは?」「ピッチャーです。」「試合、近いの?」
 「いえ、ただの練習です。」「練習に身が入りすぎて帰りが遅くなったんやな。でも、皿で叩いたらアカンわな。お母さんは、継母さん?」「いえ。実母です。」
 「まあ、傷害ではあるけど、書類送検かな。親子やし。ああ、先生に診断書出して貰ったけど、料金は払ってな。ちょっと、休憩しよか。」
 書記をしていたチエと、副署長は取り調べ室を出た。
 取り調べ室外。
 缶コーヒーを出して、チエは副署長に手渡した。
 「おおきに。どや。警視殿。お嬢の見立ては。」「嘘ついてるな。ミラー越しに表情見てたけど、『犯人の落ち着きの無さ』とちゃうで、オッチャン。」
 「やっぱりな。中町から報告受けた時、どうもおかしいと思ってた。母親に怪我させてしもて、高校生の息子はすぐに救急車呼んだんはええけど、救急隊員にもう『口論の末殴った経緯』を細かく報告している。救急から連絡があって、中町が警邏中やったから行かせたら、もう自首や。普通、口論の末とは言え、母親が怪我してたら、そっちの具合を知るのが先や。CTやMRIの結果出るまで待ってくれ、と言いそうなもんや。」
 「何か裏があるん?」と、小雪が心配そうに尋ねた。
 「オッチャン、時間、引き延ばせる?」「お嬢。何年、警察の『美味しい飯』食ってると思ってるの?任せなさい。」
 横で、楠田と小雪が笑い出した。「何の自慢?」
 午後3時半。右京区。広沢池。
 外国人の死体が上がり、近くに、アニメのマスコットが浮かんでいた。
 広沢池から150メートル先に高校があり、高校で茂原達が聞き込みをすると、持ち主らしき人物が判明した。
 事務員をしている手塚芽衣子さんの持ち物に似ている、という証言が出てきた。
 手塚さんは、本日、風邪で休んでおり、他の事務員が仕事を兼業していた。
 手塚さんは、東山署で取り調べを受けている、手塚善の母親だと判明した。
 午後5時。東山署。取り調べ室。
 書記係の席に座り、手塚善の前にはチエが座った。
 「担当の、戸部警視です。手塚善くん。お母さん思いの気持ちは、裁判の時に証言してあげます。死体遺棄に至った経緯、つまり、いきさつを話しなさい。お母さんにはレイプの痕跡があることは医師からの報告で分かっています。」
 取り調べ室外。
 嗚咽と怒号が聞こえた。
 小雪は、神代署長と茂原に頭を下げ、「お座敷に行って来ます。」と言い、出て行った。
 2人は黙って頷くだけだった。
 ―完―