========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
 島代子(たいこ)・・・芸者ネットワーク社長。
 中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。
 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
 美南聖子・・・応援の巡査。

 =====================================

 左京区鞍馬。とある温泉旅館。
 島から招待券を貰ったチエは、小雪と一緒に一泊二日の温泉旅行に来ていた。
 実は、仕事込みなので、チエは不服だったが、小雪は上機嫌だった。
 島が仕入れた情報によると、「女湯」が、何者かに覗かれている気配があるのだが、犯人を捕まえられず、温泉旅館は困っているらしい。
 総理の提案で、「LGBT法」は修正され、被害件数は、格段に下がった筈だが、悪用する悪党は、後を絶たない。
 まだ「理解不足」の出歯亀がいると聞けば、チエは動かない訳にもいかない。
 午後9時にチェックインしたチエと小雪、楠田と美南は交替で女湯に入ることにした。勿論、衣服は着ていない。
 午後11時。
 楠田達と交替して入浴したチエは、何か妙な音を聞いた。
 チエは、小雪が止めるのも聞かず、全裸のまま、洗い場に移動、洗い桶の一つに用意しておいたライトをかざした。
 ドローンだ。塀の外から侵入して撮影している者がいる。
 チエは、迷わず、洗い桶の一つを、そのドローンの方向に投げた。
 塀の外に落ちる音がした。
 これも、予め用意したウォーキートーキーで、チエは中町に連絡した。
 「中町君。塀の外にドローンを落したから拾って。それから、付近の警邏警官にドローンのリモコン所持者に『職質』かけて。どうぞ。」
 「了解。」
 午前0時。
 白鳥と警邏警官達は、クーペに乗って、ドローンを操り、録画していた外国人2人組を逮捕した。
 英語で喚く2人を白鳥は、取り敢えず旅館に連れて行った。
 着替えて、玄関で待機していたチエは言った。
 "Rape is a felony in every state. It is also a serious crime in Japan."  (どこの州でも強姦罪は重罪です。日本でも重罪です。)
 “Who Are You?
 "A female police officer passing by. Remember." (通りすがりの女性警察官よ。覚えておきなさい。)
 「レイプなんか・・・。」言いかけたアメリカ人は、口を押えた。

 「中町君、後、お願いね。楠田と美南は、明日帰ればいいことからね。」
 小雪から、バッグを受け取ったチエは白鳥と出て行こうとした。
 「警視。どちらへ?」
 尋ねた楠田にチエは、にっこり笑って言った。
 「温泉マークよ。」
 女将と番頭と小雪はクスクスと笑った。
 ―完―
 ※温泉マークを隠語として指す言葉に「さかさクラゲ」があります。温泉マークがクラゲを上下逆さにしたような形をしていることから、連れ込み旅館やラブホテルを意味する言葉として使われていました。昭和20年代に流行語として使われていました。
 昭和30年代には旅館における温泉マークの使用が禁止され、昭和51年には日本温泉協会が天然温泉を使用している旅館を明示するために温泉マークを改めてデザインし直しました。現在も使われている天然温泉表示マークが誕生しています。