========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
 大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。白鳥の父。
 灘康夫・・・京都府知事。元作家。「康夫ちゃん」のニックネームがある。
 金平桂子・・・京都市市長。

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 ※10月、京都府八幡市上津屋の木津川に架かる上津屋橋(流れ橋)で、通行人が「橋が燃えている」と119番した。約2時間20分後に消したが、木製橋板の一部など約13平方メートルが焼けた。けが人はいないという。橋は通行止めとなっている。
 流れ橋は八幡市と久御山町を結ぶ全長約356メートルの日本最大級の木造橋。橋を管理する京都府山城北土木事務所によると、2022年以降、橋脚の一部が焼けるなど不審火が計4件発生しているという。
 映画のロケ地として有名な、木造の橋である。時代劇で多用される、現存する貴重な橋である。

 午後1時。東山署。会議室。
 「八幡市から協力要請が来ている。先日また、火災、いや、放火があった。今までは『景観を損ねる』とか『映画撮影に支障』などの意見があって、放火されては復元を繰り返してきた。康夫ちゃんもお怒りや。金平市長は、『ジャンヌ』と言われたお方や。橋の近くに防犯センサー、1.5キロ先の『味取配送センター』に依頼して、望遠レンズを組み合わせた防犯カメラを設置、府警にも府民のホットライン、『告げ口電話』を設置するように言ってきた。最近は、外国人の犯罪が多い。勿論、決めつけはイカンが、いつでも狙われる。京都はもう『性善説は捨てる』とまで、康夫ちゃんは言っている。」
 その時、チエのスマホに『芸者ネットワーク』から連絡が入った。
 チエは、署長に「行ってきます。」とだけ言って、部下を引き連れ、現場に向かった。
 チエは、パトカーから、警察無線で、『先に』非常線を張った。
 「こちら戸部警視。八幡東インターチェンジに向かう車の検問開始。第二京阪道路及び一般道で、速度を上げて走行する車はスピード違反として職務質問してよし。火器は携帯していなくても、消炎検査は実行すべし。放火魔検挙に手段を選ぶな。」
 明らかに、越権行為が幾つかあるのだが、『日頃の実績』がもの言う。
 途中、やはり放火があった、と入電があった。
 午後2時半。八幡東インターチェンジ。
 一際声高く、検問の警察官に文句を言う、日本人・外国人の2人組がいた。
 チエのパトカーと、白鳥の白バイが到着するのが、ほぼ同着だった。
 「白鳥巡査。後部座席のカメラ、調べて。」と、チエが指示を出し、「捜査の協力をお願いします。凶悪犯が逃走中です。あなたのクルマのドラレコのメモリーを貸して下さい。後日、お返しします。」
 運転免許証を確認しながら、チエは名前を読み上げた。リン・コウセイさん。メモリーを。いつ日本に?運転免許証は、那珂国のものの繰り替えですか。講習受けました?」
 「講習?」「日本の交通ルールの。右側通行の国もあるサカイ、簡単な講習を受けることになってますけど。いややわあ。知ってるくせに。講習修了証は、まだ届いていませんか?」「ええ。」
 「警視。木津川の『流れ橋』映ってますねえ。」と白鳥が言い、「警視。『センター』から届きました。木津川の『流れ橋』映ってますねえ。」と、楠田が言った。
 「夕飯は、警察署やな。クルマは置いて行っていいのよ、レッカーがあるサカイ。」
 午後5時。東山署。取り調べ室外の廊下。
 中から、断末魔のような声が漏れ聞こえる。
 署長、副署長、大前田警視正、白鳥、茂原が自販機の前でコーヒーを飲んでいる。
 「いつも、すまんな、神代。」「いやいや、前からどうにかならんかと思ってたら、府知事も市長も本気出してくれたサカイ。」
 そこに、紙袋を持った、小雪が現れた。「事情」あって、大人用オムツのストックは、署の備品に置かない。名目も他の購買名目になる。
 声が大人しくなったので、茂原がオムツを持って、取り調べ室に入った。
 今日の『仕事』は終った。
 ―完―