========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。チエを「お嬢」と呼んだり、「小町」と呼んだりしている。
 金城神父・・・チエが日曜学校に通っていた頃の神父。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。


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 午後8時。京阪電車車内。
 チエと小雪は、天神祭りの花火を少し見て、帰宅途中だった。
 急行が車両故障で止まったので、普通電車に乗ったが、既に混雑していた。
 樟葉に到着する前に、痴漢行為があり、チエは発見した。
 隣の車両に何食わぬ顔で移動した男を2人は追い掛けた。
 近づいたものの、チエの父の声がチエの脳を横切る。
 「ええか、チエ。『暴れん坊』は京都府内だけにスルンヤで。」
 「小雪ちゃん、どこから京都府やったっけ?」「次の橋本からやな。昔遊郭あったとこ。」
 「そこしかないな。」チエは、覚悟した。
 男は、それとなく降りようとした。
 チエは、男の手を掴んだ。
 「何すんじゃ、ボケ!!」
 すると、車内中央付近から犬の鳴き声がして、男目がけて突進してきた。
 どうやら、乗客のペットの犬がケースの中から飛び出したらしい。
 周囲の人間は、今まで出来なかった空間を作った。
 犬は、尻尾を立ててうなり声をあげ、驚いて倒れた男の股間に噛みついた。
 「チエちゃん、」今日は、お仕置き要らんな。」
 「うん。警察犬に推薦するわ。」
 回りの乗客はクスクスと笑った。異様な臭いを我慢しながら。
 チエは身分を明かして、乗客の1人に110番するように依頼した。
 午後10時。神代家。浴室。
 「バチが当たったかな?そいつ、痴漢の常習犯やったらしい。」
 「犬に表彰状出すの?」「飼い主にな。うっかり、ケースを開けてしまったらしいが、あの男の声が、虐待していた、飼い主の夫の声に似ていたらしい。」
 「橋本駅に銅像立てたら、名物になるんとちゃうかな?」
 「そやな、明日聞いてみるわ、京阪に。」
 明日は2人揃って休暇だ。深夜のお風呂は長風呂になりそうだった。
 ―完―