声が出ない。早く返事をしなきゃいけないのに、声が出なかった。



代わりに出たのは、冷たい涙だった。
自分でもなんで泣いているのか分からない。なんだか今日は泣いてばっかりなような気がした。


一気に力がぬけて、私は玄関に座り込んだ。

そしたら、“お父さん”が、歩み寄ってきて、私の肩に手を置いて言った。

「たとえ、自分の子供じゃなくても、お父さんは、ひあめを愛していたよ。」


優しい声が耳に心地良い。




そこで、私ははたと気づいた。



別に、いろんな家族のカタチがあったっていい。

今、ここにいる“お父さん”は、血が繋がっていなくても、私のことを育ててくれた大事なお父さんであることは変わりなくて。

なんでそんなことがわからなかったのだろう。
血が繋がっていなくても、お父さんは私に心配かけまいと笑ってくれていたし、愛してくれていた。


だったら、私だって変に距離を取るのはおかしい。


「お父さん、ありがとう」

溢れた言葉は、感謝の言葉だった。

お父さんは、笑顔で頷いた。









たとえ、血が繋がっていなくても、私たちは家族なんだ。
お父さんは私を愛してくれていて、私も、お父さんのことが好きだ。


もう、私とお父さんの間に距離は無かった。