一瞬、意識が闇に絡め取られそうになった。



でも、ここで諦めてしまったら私は二度と、話せないかもしれない。

私は辛うじて体勢を持ち直し、声を振り絞った。






「ごめんなさい。勝手に、家を出ていってしまってごめんなさい。」

これが精一杯だった。

お父さんはくしゃり、と表情を歪めたと思ったら、その目に(うっす)らと涙が浮かび上がってきた。

「ひあめ、ごめんな。ひあめは知らない方が幸せだったのかもな。」



「・・・・・・・・」

何も返せない。・・というより、なんて返せばいいのか分からなかった。