灯利とは、家の前の大きな交差点のところで別れた。

今から家に帰って、“お父さん”と会うって思ったらとても憂鬱だけど、家を飛び出してしまったのは私だし。



スマホの、チェーンに繋がれた鍵を、ゆっくりと鍵穴に差し込んだ。



『ガチャリ』
そんなに大きい音でもないのに、私の肩がびくんと跳ねた。

ドアを開けると、いつもの家の匂いがした。いつも通りの、家の匂い。
なのに、今は、知らない人の家に来てるみたいに緊張している。家を飛び出してしまったと言う罪悪感からだろうか。

靴を脱ぎたくない。脱げば、もう私にはリビングに行くという選択肢しかなくなってしまう。



その時、握っていたスマホが震えた。
見れば、灯利からメッセージが来ていた。