「私さ、ずっと悩みだったんだ。だけど、今日灯利に聞いてもらえてすごくすっきりした。今までは、いくら泣いたって、嘆いたって現実は変わらない。だから泣いても嘆いても意味ないって思って、そう思えば思うほど涙が溢れてきたの。
だけど、灯利といると、泣いてもいいんだって思えるの。なんていうかね・・・・・・今までは泣いても何も変わらないし意味ないって思ってたような自分の中でくすぶっていたものが、すっ、と外に立て行くの。灯利といると。」


前では信じられなかったくらいに言葉がスルスルと出てくる。自分の意思を、感謝の気持ちを相手に伝えるってこんなに気持ちよくて、心地よくて、楽しくて、嬉しくなるんだな。

「ふふ、ありがと。」
灯利は、可愛らしく微笑んでから、私の目をしっかりと見て言った。

「ねぇ、知ってる?セカイを見るフィルターって。」

「え?ふぃ、フィルター?」

「どんなに悲観的なことがあっても、そのフィルターが元からキラキラしている人は、ポジティブに生きていけるんだって。それで、そのフィルターをキラキラさせるときって、いわゆる、青春って時なんだって。つまり、青春ってセカイを見るフィルターをキラキラに飾りつける時期なんだよ。」

「へぇ・・・・・・。」

「今、ひあめは成長できたから、多分世界を見るフィルターがちょっとだけキラキラしたんじゃないかな。」

灯利は、さっきよりもっと微笑んで言った。

「そう、かもね。」
私も自然と笑顔になって、気づいたら言葉が溢れた。




「ふふ、灯利のところに来て良かった。来た時とは、信じられないくらい気持ちが晴れ晴れしてるよ。やっぱり、お母さんといると、いところに行ける。」

「え?お母さんって・・・?」


私は、可愛い刺繍の施されたバッグを引き寄せて、中から一通のファイルを取り出した。
できるだけていねいに、ファイルから一通の封筒をとりだした。



ハートの柄のついた、淡いピンク色のマスキングテープをはがし、中から便箋を取り出してゆっくりと開く。

「これね、お母さんが残してくれた手紙なんだ。“お父さん”にもらったんだよ。『胡桃が、私がもしいなくなることがあれば渡してって言っていた手紙だよ』って言われて。」