「・・・・・・・・・・その前に、私の悩みを聞いてくれる?」

今日知った事実を言う覚悟はまだ無かった。
だけど、せっかく言う機会を作ってくれたから、私は今日泣いていた理由の代わりに、いつも抱えていた悩みを打ち明けることにした。





灯利は、最後まで口を挟まずに聞いてくれた。
同情することもなく、かと言って無関心に聞いているわけではなくて、灯利の聞き方が心地よくて、私は、つっかえながらも最後まで話すことができた。

あの法令が出されたけど、お母さんの残した名前だから、簡単に変えることができなかったこと。
まだ期限まで一年以上あるのに、中学生のとき、クラスメイトにいじめられたこと。

「正直に話して、どう思った?」



「ひあめには、辛い時期があったんだな、って気づけたし、話してくれたことが嬉しかった。それに、ひあめがその悲しみを乗り越えて強く生きようとしている姿が見えて、すごいなって思った。」

灯利は、一言一言をていねいに紡いでくれた。
ただ自分の感想を述べているだけじゃなくて、私を気遣う心が見えて、嬉しさに胸が高鳴った。