「ひあめは、どうしたい?」

ああ、こう聞かれると思った。
優しくて、私の意思を尊重してくれるお父さんだからこその質問。

・・・・お母さんの遺志をふみにじらないように丁重に考えたいし、私自身、この名前にどんな意味が込められてるかわからない。だけど、お母さんの思い通りになるように努力して、慎重に決めていきたい。名前は、私が一生使う、ものだから。


そう言えたらいいのに、こう言う時に限って言葉にならない。
そんな自分が歯がゆくてたまらない。


長い沈黙を無理やり切り裂くように私は吐き出した。

「わからない」
と。

「そうか・・・・・・・・」


お父さんは意味深に呟いて、じっと(うつむ)いた。