さようならを言わなくちゃ

 ようやく一日が終わった。最近はなんだか時間が過ぎるのが遅い気がする。平凡で淡泊な毎日から変化したからだろうか。
 でも、きっと彼女たちも、私みたいなやつと話すのが新鮮で楽しんでいるだけだろうし、こんな生活も今だけかもしれない。さて、とっとと帰ろう。
 すでに荷物を入れておいたリュックを背負ってドアを開けようとする。
「あ、りんりん! ちょい待ちちょい待ち!」
 教室の後ろの方から、二人は慌てて私のもとに走って来る。
「一緒に帰ろ!」
 嬉しさより先に、困惑が来た。
 お昼休みまではまだ分かった。でも、一緒に帰る……?
 二人はどうして、そんなに私と絡みたいのだろうか。
「どした? 一緒は嫌だった?」
「うちら距離縮めすぎたかな」
 そういってめぐみは笑う。
 違う、嫌というか……ただ困惑してるだけで、断るつもりは……
 言いたいのに、言葉が出ない。気にしすぎだって前も言われたのに、次はうざいって思われてしまうかもしれない。どう言葉にすればいいかわからなかった。
「なんかごめんね~また明日」
 そう言って二人は階段へ向かう。
「待って!」
 咄嗟に出た。自分でも意識しないほどだった。
「一緒に、帰りたい」
 ただ一つ、明確に正しいと感じたのは、これだけだった。
 どうして私なのか困惑したし、期待に応えらえるか不安もあったけれど……
 私は、この二人と友達になりたい。
「そうこなくっちゃ!」
 二人は笑顔を浮かべると、私を真ん中にして歩き出した。
 それじゃ、話しにくくない? 上手くリアクションとれないよ?
 でも、いいや……二人が、そうしてくれたんだから。

 しばらく歩き続け、とうとう駅前に着いた。
 思った通り……二人とも、私にたくさん話しかけてくれているのに、全然話が盛り上がらない。
「りんりんは何のドラマが好きー?」
「ごめん、見てない……」
「じゃあじゃあ、恋バナしよ! 好きな人とかいるの?」
「いや、特に……」
 ずっとこんな調子。なんだか悪いことをしている気分になる。というか、本当に悪いことをしているのかもしれない。二人の優しさに甘えて、私なんかが隣にいて。絶対つまらないに決まってるのに。一体どうしたら……
「りんりん。いいんだよ、落ち込まないで」
「え……?」
怜奈だった。心の中を、見透かして……?
「誰でもわかるよ。どんどん目線が下がってくんだもん」
「そうそう。うちらはりんりんのことが知りたくて聞いてるんだから」
 そっか……別に盛り上げる必要なんてなかったんだ。
 でも、できるなら盛り上げられた方がいいに決まってる。やっぱり、私は……
「あのね、りんりん。私たちも同じなんだ」