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「というわけで、迷宮攻略に行かない?」
「何がというわけなんかは知らんけど、ええんやない?」
「そうですねー。その方が良さそうです。今回は私たちも配信ありで」
ほらすぐまとまった。
とはいえ、このまま出発ってわけにはいかない。状況が状況だから、ちゃんと許可をとらないと。
まだ会議室に残っていたグラシアンに視線を向ければ、さすがに察してくれる。
「そうだな、この辺りの迷宮ならかまわない。ただ。一応途中の階層から始めてくれると助かる」
「もちろん」
ここら辺までは攻め込まれない想定とはいえ、一応ね。
二人と大迷宮の外に出て、夜墨に乗せてもらう。なんだかんだで彼の方が速いし、何より私だと迷うから。ウィンテと令奈を乗せる分には夜墨も嫌がらないから、そういう意味でも二人と一緒は楽だ。
上空で地図と地形を見比べながら、目的地の方向を探す。
「グラシアンの言ってたのは、こっちだね。夜墨、よろしく」
「前から思っとったんやけど、すぐ明後日の方に行くのに地図は読めるんなんなん?」
「不思議だよね。私も知りたい」
地図読むのに地形も見れるんだから、もう少し迷わなくても良いと思うんだ。
まあそれはそれとしてだ。
地図上の目印と地脈を頼りに迷宮を探す。この方向には大小三つの迷宮があるようで、私たちが行くとすれば、その中で最も深い二百階層クラスの迷宮だ。だから夜墨も一番太い流れを辿ってくれてるんだけど、下はなかなかに豊かな森だ。目視で探すのは難しい。
まあ、迷宮は中と外が空間的に断絶されてるし、支配域を広げて魂力の違和感を頼りに探せば問題ない。二人もそれは分かってるみたいだね。私や夜墨に合わせて支配を助けてくれてる。これなら、半径数十キロくらいの範囲は緩く支配できそうだ。
「うん?」
「なんや、話に無かったんがあるなぁ」
「だね」
支配の途切れる場所があったのはいいんだ。迷宮を見つけたってことだから。ただ、場所が問題。私が地形を読み違えてるのかとも思ったけど、令奈やウィンテの反応からして、やっぱりそうでないらしい。
ならあれは、グラシアン達も把握していない迷宮ってことになる。
「ここ最近で新しくできたのかもしれませんね。行ってみますか?」
「そうだね。戦術上まずい場所だし」
「やなぁ。ここ飛ばれたら、ベルサイユの背ぇはもう目の前やわ」
見つけられたのは、ラッキーかな。そうすると他にも無いか気になるところだ。後でぐるっと回ってみた方がよさそうだね。
なんて考えながら件の迷宮に降り立つ。夜墨はいつも通り上空で待機だ。
「なんだか思ったより深そうですね」
「二百はあるやろね」
「だね。けっこう古そうだし」
とすると、ますます他にも見落としがありそうだ。新しくできたのなら、運が悪かったねで済む話なんだけど。
まあ、人海戦術で探したんだろうし、抜けもあるか。私たちみたいに魂力支配を応用した探し方は一般天使には難しい。ああ、一般どころか幹部もだね。その上、動かせるのが天使だけってなると、尚更だ。
「ここ、私らで攻略しちゃう?」
「そうしましょう。必要なら後で引き渡せばいいですし」
「じゃあとりあえず、さくっと十一階層まで行こうか」
配信はそれからだ。たぶん走れば十分ちょいでいけるでしょ。
なんてしてた予想は当たらなくて、十分後にはもう十一階層に到着した。私の思っていた以上に二人とも戦い方や魂力の扱いが上手くなってたんだ。これなら今のまま防衛戦を始めてもまったく問題なかったかもしれないってくらい。
もちろん備えはいくらあってもいいから、予定変更なんてしないけど。イレギュラーなんていくらでも起きうるから。
実際、ここの迷宮もなんだか妙だ。私の勘違いかもしれないってくらい微妙な違和感だし、もっと深くまで潜ってみないと判断つかないけど。
これについては配信の後で二人とも相談してみよう。今はまず、制限緩和のためのコラボ配信だ。
「準備できた?」
「私はええよ」
「もう少し待ってください。えっと、たしか……」
ステータス画面を睨む二人に声をかければ、色の良い返事は一つだけ。旅立つまでは定期的にしてた令奈はともかく、ウィンテは三百年ぶりくらいの配信になるから仕方ない。なぜか若干UIも変わってるし。
そんな二人の装備は、全体的には見慣れたもの。ウィンテは黒のゴシックドレスに白衣と血色の大鎌だし、令奈は緋色の舞衣を巫女服の上に纏った姿だ。
しかしよくよく見れば見慣れない装飾品が増えている。令奈が左腕に嵌めてる腕輪についてるのは、天照さんから受け継いだ八尺瓊勾玉だろう。いつか作った扇子の房に付いてる羽根飾りも、たぶん神器だ。
ウィンテの腕に付けている腕飾りの宝石からもやたらと強い力を感じるし、どこにあるかは分からないけど、八咫鏡も持っているはず。
なるほど。二人とも、道中でちゃっかり大迷宮クラスを攻略してきたらしい。
そりゃ強くなってるはずだ。天照さんの時とは違って単独攻略したんだろうし。
「お待たせしました!」
お、ウィンテの方も準備ができたみたいだね。
えっと、一応確認。カメラは、ちゃんと正面からになってる。コメント欄もコラボの時の設定になってるね。うん、問題無さそうだ。
「ん、大丈夫。始めるよ。三、二、一……」
零とは言わず、配信開始ボタンをタップする。同時に二人も始めたようで、久方ぶりに見る通知が私にも届いた。
「というわけで、迷宮攻略に行かない?」
「何がというわけなんかは知らんけど、ええんやない?」
「そうですねー。その方が良さそうです。今回は私たちも配信ありで」
ほらすぐまとまった。
とはいえ、このまま出発ってわけにはいかない。状況が状況だから、ちゃんと許可をとらないと。
まだ会議室に残っていたグラシアンに視線を向ければ、さすがに察してくれる。
「そうだな、この辺りの迷宮ならかまわない。ただ。一応途中の階層から始めてくれると助かる」
「もちろん」
ここら辺までは攻め込まれない想定とはいえ、一応ね。
二人と大迷宮の外に出て、夜墨に乗せてもらう。なんだかんだで彼の方が速いし、何より私だと迷うから。ウィンテと令奈を乗せる分には夜墨も嫌がらないから、そういう意味でも二人と一緒は楽だ。
上空で地図と地形を見比べながら、目的地の方向を探す。
「グラシアンの言ってたのは、こっちだね。夜墨、よろしく」
「前から思っとったんやけど、すぐ明後日の方に行くのに地図は読めるんなんなん?」
「不思議だよね。私も知りたい」
地図読むのに地形も見れるんだから、もう少し迷わなくても良いと思うんだ。
まあそれはそれとしてだ。
地図上の目印と地脈を頼りに迷宮を探す。この方向には大小三つの迷宮があるようで、私たちが行くとすれば、その中で最も深い二百階層クラスの迷宮だ。だから夜墨も一番太い流れを辿ってくれてるんだけど、下はなかなかに豊かな森だ。目視で探すのは難しい。
まあ、迷宮は中と外が空間的に断絶されてるし、支配域を広げて魂力の違和感を頼りに探せば問題ない。二人もそれは分かってるみたいだね。私や夜墨に合わせて支配を助けてくれてる。これなら、半径数十キロくらいの範囲は緩く支配できそうだ。
「うん?」
「なんや、話に無かったんがあるなぁ」
「だね」
支配の途切れる場所があったのはいいんだ。迷宮を見つけたってことだから。ただ、場所が問題。私が地形を読み違えてるのかとも思ったけど、令奈やウィンテの反応からして、やっぱりそうでないらしい。
ならあれは、グラシアン達も把握していない迷宮ってことになる。
「ここ最近で新しくできたのかもしれませんね。行ってみますか?」
「そうだね。戦術上まずい場所だし」
「やなぁ。ここ飛ばれたら、ベルサイユの背ぇはもう目の前やわ」
見つけられたのは、ラッキーかな。そうすると他にも無いか気になるところだ。後でぐるっと回ってみた方がよさそうだね。
なんて考えながら件の迷宮に降り立つ。夜墨はいつも通り上空で待機だ。
「なんだか思ったより深そうですね」
「二百はあるやろね」
「だね。けっこう古そうだし」
とすると、ますます他にも見落としがありそうだ。新しくできたのなら、運が悪かったねで済む話なんだけど。
まあ、人海戦術で探したんだろうし、抜けもあるか。私たちみたいに魂力支配を応用した探し方は一般天使には難しい。ああ、一般どころか幹部もだね。その上、動かせるのが天使だけってなると、尚更だ。
「ここ、私らで攻略しちゃう?」
「そうしましょう。必要なら後で引き渡せばいいですし」
「じゃあとりあえず、さくっと十一階層まで行こうか」
配信はそれからだ。たぶん走れば十分ちょいでいけるでしょ。
なんてしてた予想は当たらなくて、十分後にはもう十一階層に到着した。私の思っていた以上に二人とも戦い方や魂力の扱いが上手くなってたんだ。これなら今のまま防衛戦を始めてもまったく問題なかったかもしれないってくらい。
もちろん備えはいくらあってもいいから、予定変更なんてしないけど。イレギュラーなんていくらでも起きうるから。
実際、ここの迷宮もなんだか妙だ。私の勘違いかもしれないってくらい微妙な違和感だし、もっと深くまで潜ってみないと判断つかないけど。
これについては配信の後で二人とも相談してみよう。今はまず、制限緩和のためのコラボ配信だ。
「準備できた?」
「私はええよ」
「もう少し待ってください。えっと、たしか……」
ステータス画面を睨む二人に声をかければ、色の良い返事は一つだけ。旅立つまでは定期的にしてた令奈はともかく、ウィンテは三百年ぶりくらいの配信になるから仕方ない。なぜか若干UIも変わってるし。
そんな二人の装備は、全体的には見慣れたもの。ウィンテは黒のゴシックドレスに白衣と血色の大鎌だし、令奈は緋色の舞衣を巫女服の上に纏った姿だ。
しかしよくよく見れば見慣れない装飾品が増えている。令奈が左腕に嵌めてる腕輪についてるのは、天照さんから受け継いだ八尺瓊勾玉だろう。いつか作った扇子の房に付いてる羽根飾りも、たぶん神器だ。
ウィンテの腕に付けている腕飾りの宝石からもやたらと強い力を感じるし、どこにあるかは分からないけど、八咫鏡も持っているはず。
なるほど。二人とも、道中でちゃっかり大迷宮クラスを攻略してきたらしい。
そりゃ強くなってるはずだ。天照さんの時とは違って単独攻略したんだろうし。
「お待たせしました!」
お、ウィンテの方も準備ができたみたいだね。
えっと、一応確認。カメラは、ちゃんと正面からになってる。コメント欄もコラボの時の設定になってるね。うん、問題無さそうだ。
「ん、大丈夫。始めるよ。三、二、一……」
零とは言わず、配信開始ボタンをタップする。同時に二人も始めたようで、久方ぶりに見る通知が私にも届いた。



