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迷宮そのものが揺れてるのでは無いかと錯覚するような衝撃だ。
「ぅ……っ」
同時に感じる激痛に、くぐもった声が漏れる。
即死級の概念は全て防いだはずなのに、それに近しいものが私を襲っている。
さすがは神々。
この世界の森羅万象に生ずる者。
だけど、生きてる。
この痛みがその証だ。
弾けたエネルギーの発する光が収まり、配信画面にも色が戻る。
「く、ぅぅ……。ふ、ふふ、残念。耐えちゃった」
表情筋を殆ど動かさない、いつもの笑み。
それを意識的に作って、伊邪那美に向ける。
今の衝撃で、新しく生まれた神の大半は消し飛んだらしい。
どうせすぐに産み直されるんだろうけども。
『い、きて、る?』
『なんで生きてるんだこの人、じゃなくて龍』
『いや、生きてるけど、生きてるけど!』
『ハロさん、左腕が……』
『左腕ないなっとる。。。』
「まあ、必要経費だよ」
さすがに、無傷とはいかなかった。
伊邪那美の魔法、それも特大のやつを、他の魔法と同じようには受けられない。
だから、身体強化を左腕に集中して、殴った。
強化と鱗で受けるつもりだった他の魔法を、その衝撃で相殺するつもりでね。
結果殆どはどうにかなったけど、いくつかはまともに受けちゃったし、左腕も上腕あたりから消し飛んじゃったよ。
まあ、命に比べたら安いもんだね。
腕以外はすぐに治せるし。
なんて、息を整えてる間にも、また神は産み落とされていく。
瞬く間にその数を増やし、また、百を超える八百万の神々が顕現した。
私の支配域は、二割を切ったか。
少ない支配領域でも、なんとか防御は間にあう。
致命的にはならない。
ならばと右腕だけで槍を振るい、魔法を放ち、ブレスでなぎ払えども、やはり神の産み落とされる方が早い。
いよいよ絶望的だね。
どうしようか。
『て、撤退した方がいいんじゃ。。。』
『次まで生き延びるからよ、ハロさんも、生き延びてくれよ?』
『ハロさん死んだら元も子もないだろ?』
『俺も半年、いや、二ヶ月、一ヶ月くらいなら生きる自信があるぞ!』
『ハロさん死亡とか、放送事故もいいところだからさ、逃げよ』
『これは無理だって。相手が悪すぎた』
『ハロさん、もうやめて・・・』
『初コメ。普段割とアンチ気味な書き込みしてる俺だけどさ、さすがに死ぬのは見たくない』
『逃げて、、、』
『死ぬって』
逃げて、無理だ、そんな言葉で、コメント欄が埋まる。
ああ、確かにこの人、どっかのスレで中傷してたな。
彼らも、別に無責任に言ってる訳じゃないし、本気で心配してくれてるんだろう。
寝たきりの古参さん達まで、逃げろって言ってるし。
実際、治すそばから傷は増えてるし、左腕は無いしで、ボロボロだ。
その上、体力は削られてる。
でも、こう思われるのは悔しいね。
まあ、いったん引くのは正しいのかもしれないけど。
けど、さ。
『まだです』
『まだやな。こんなん、まだ詰みちゃうわ』
ふふ、やっぱり二人は、分かってるね。
「ウィンテ、令奈、そうだよ。ここからだ」
考えろ、頭を使え。
考えることを止めたら、葦と同じだ。
攻撃を捌き、数を減らしながらも、頭を動かせ。
問題なのは、力の流れを乱される事だ。
それさえ無ければ、一気に魂力の支配域を奪える。
そうなれば、纏めて処理できる。
流れ、整える……。
導く?
――ああ、なんだ。
「良い物あんじゃん」
全方位へ雷の魔法を放ち、一瞬の間を作る。
そして取り出したのは、一つの玉。
「ぐぅっかはぁっ……」
私の魔法を貫いて、不可視の衝撃に腹を打たれる。
続けて顎を掠めた何かで視界が揺れた。
「は、はは、また同じ手か。芸が、無いね」
そして私を囲む、無数の魔法と権能。
ご丁寧に同じ黒雷の魔法で伊邪那美が私を狙っている。
これを、無視する。
「あーんっと」
代わりに握ったまま離さなかったそれを、ビー玉より一回りほど大きな紫色の玉を口に含み、飲み込む。
若干の苦しさを覚えつつ、それが私の中に入るのを感じた。
そして、それが、私の魂に溶け込む。
まず感じたのは、左腕のむず痒さ。
欠けていた魂力があるべき形をとって、そのまま、肉を纏う。
『左腕が、、、』
『すげぇ、治った。いつかの酒みたいだな』
『ハロさんクラスの肉体瞬間再生って、何飲み込んだんだ?』
左腕の感触を確かめると同時に自覚する、溢れんばかりの力の脈動。
倍するには及ばないまでも、それに近しい力だ。
私のものとして完全に定着するのはこの一部だけだろうけども、それでも十分に大きい、膨大な力。
その力が、私の得た新たな権能の使い方を教えてくれる。
「えっと、こうか」
無数の魔法が、権能が、残り一割ほどになった私の領域に入った瞬間、その方向を変える。
別の意思に導かれるようにして逸れ、そして遅れて発動された伊邪那美の魔法と衝突する。
再び巻き起こる衝撃。
私にダメージは無い。
本来なら私を巻き込むはずの余波も、明後日の方向に導かれて届かない。
『す、すげぇ。。。』
『どういう力だ?』
『よく分からんけどすげぇ』
『いやマジで何飲み込んだんだ?』
さすがに、伊邪那美の魔法は逸らせそうになかった。
けど、十分だ。
「さあ、決着を付けようか、古き世に死せし神よ」
迷宮そのものが揺れてるのでは無いかと錯覚するような衝撃だ。
「ぅ……っ」
同時に感じる激痛に、くぐもった声が漏れる。
即死級の概念は全て防いだはずなのに、それに近しいものが私を襲っている。
さすがは神々。
この世界の森羅万象に生ずる者。
だけど、生きてる。
この痛みがその証だ。
弾けたエネルギーの発する光が収まり、配信画面にも色が戻る。
「く、ぅぅ……。ふ、ふふ、残念。耐えちゃった」
表情筋を殆ど動かさない、いつもの笑み。
それを意識的に作って、伊邪那美に向ける。
今の衝撃で、新しく生まれた神の大半は消し飛んだらしい。
どうせすぐに産み直されるんだろうけども。
『い、きて、る?』
『なんで生きてるんだこの人、じゃなくて龍』
『いや、生きてるけど、生きてるけど!』
『ハロさん、左腕が……』
『左腕ないなっとる。。。』
「まあ、必要経費だよ」
さすがに、無傷とはいかなかった。
伊邪那美の魔法、それも特大のやつを、他の魔法と同じようには受けられない。
だから、身体強化を左腕に集中して、殴った。
強化と鱗で受けるつもりだった他の魔法を、その衝撃で相殺するつもりでね。
結果殆どはどうにかなったけど、いくつかはまともに受けちゃったし、左腕も上腕あたりから消し飛んじゃったよ。
まあ、命に比べたら安いもんだね。
腕以外はすぐに治せるし。
なんて、息を整えてる間にも、また神は産み落とされていく。
瞬く間にその数を増やし、また、百を超える八百万の神々が顕現した。
私の支配域は、二割を切ったか。
少ない支配領域でも、なんとか防御は間にあう。
致命的にはならない。
ならばと右腕だけで槍を振るい、魔法を放ち、ブレスでなぎ払えども、やはり神の産み落とされる方が早い。
いよいよ絶望的だね。
どうしようか。
『て、撤退した方がいいんじゃ。。。』
『次まで生き延びるからよ、ハロさんも、生き延びてくれよ?』
『ハロさん死んだら元も子もないだろ?』
『俺も半年、いや、二ヶ月、一ヶ月くらいなら生きる自信があるぞ!』
『ハロさん死亡とか、放送事故もいいところだからさ、逃げよ』
『これは無理だって。相手が悪すぎた』
『ハロさん、もうやめて・・・』
『初コメ。普段割とアンチ気味な書き込みしてる俺だけどさ、さすがに死ぬのは見たくない』
『逃げて、、、』
『死ぬって』
逃げて、無理だ、そんな言葉で、コメント欄が埋まる。
ああ、確かにこの人、どっかのスレで中傷してたな。
彼らも、別に無責任に言ってる訳じゃないし、本気で心配してくれてるんだろう。
寝たきりの古参さん達まで、逃げろって言ってるし。
実際、治すそばから傷は増えてるし、左腕は無いしで、ボロボロだ。
その上、体力は削られてる。
でも、こう思われるのは悔しいね。
まあ、いったん引くのは正しいのかもしれないけど。
けど、さ。
『まだです』
『まだやな。こんなん、まだ詰みちゃうわ』
ふふ、やっぱり二人は、分かってるね。
「ウィンテ、令奈、そうだよ。ここからだ」
考えろ、頭を使え。
考えることを止めたら、葦と同じだ。
攻撃を捌き、数を減らしながらも、頭を動かせ。
問題なのは、力の流れを乱される事だ。
それさえ無ければ、一気に魂力の支配域を奪える。
そうなれば、纏めて処理できる。
流れ、整える……。
導く?
――ああ、なんだ。
「良い物あんじゃん」
全方位へ雷の魔法を放ち、一瞬の間を作る。
そして取り出したのは、一つの玉。
「ぐぅっかはぁっ……」
私の魔法を貫いて、不可視の衝撃に腹を打たれる。
続けて顎を掠めた何かで視界が揺れた。
「は、はは、また同じ手か。芸が、無いね」
そして私を囲む、無数の魔法と権能。
ご丁寧に同じ黒雷の魔法で伊邪那美が私を狙っている。
これを、無視する。
「あーんっと」
代わりに握ったまま離さなかったそれを、ビー玉より一回りほど大きな紫色の玉を口に含み、飲み込む。
若干の苦しさを覚えつつ、それが私の中に入るのを感じた。
そして、それが、私の魂に溶け込む。
まず感じたのは、左腕のむず痒さ。
欠けていた魂力があるべき形をとって、そのまま、肉を纏う。
『左腕が、、、』
『すげぇ、治った。いつかの酒みたいだな』
『ハロさんクラスの肉体瞬間再生って、何飲み込んだんだ?』
左腕の感触を確かめると同時に自覚する、溢れんばかりの力の脈動。
倍するには及ばないまでも、それに近しい力だ。
私のものとして完全に定着するのはこの一部だけだろうけども、それでも十分に大きい、膨大な力。
その力が、私の得た新たな権能の使い方を教えてくれる。
「えっと、こうか」
無数の魔法が、権能が、残り一割ほどになった私の領域に入った瞬間、その方向を変える。
別の意思に導かれるようにして逸れ、そして遅れて発動された伊邪那美の魔法と衝突する。
再び巻き起こる衝撃。
私にダメージは無い。
本来なら私を巻き込むはずの余波も、明後日の方向に導かれて届かない。
『す、すげぇ。。。』
『どういう力だ?』
『よく分からんけどすげぇ』
『いやマジで何飲み込んだんだ?』
さすがに、伊邪那美の魔法は逸らせそうになかった。
けど、十分だ。
「さあ、決着を付けようか、古き世に死せし神よ」



