自分の部屋にある小さなテレビをつけると、ちょうどニュース番組が放送していた。
「東京都××区○○中学校三年生(15)の、谷口 愛良さんが、何者かによって殺されました。愛良さんの遺体は△川の河原で見つかりました。発見者によると、ナイフで何か所か刺されていた、とのことです。警察によると、犯人は男の可能性が高いということです。愛良さんは、とても素敵な子だったと、親友が語りました。愛良さんの事件を機に、『大事な命を奪った犯人は誰か!ネット探偵団』というフレーズで活動するYouTubeチャンネルが、勝手な予想を世間にばらまいて、問題になっています。愛良さんの御両親は、『迷惑だ』『やめてほしい』とコメントをしています。」
結衣は、呆然とした。勝手な予想を世間にばらまいている奴がいるだと?信じられない。
そいつは何を考えているのだろうか。結衣のように、「愛良を殺した犯人を見つけてやる」と考えている人がいることは嬉しい。
だが、それをわざわざ世間に伝えるだろうか?
勝手な予想を世間にばらまいている。それならば、『ネット探偵団』は、結衣を疑うかもしれないのだ。
結衣は、ため息をついた。
インターネットの問題は、自分にはどうすることもできない。
悔しさと悲しさに混じった感情が、結衣の心を震わせた。

 土曜日、結衣は蓮夜くんのインスタを確認した。
「あっ。更新されてる。」
愛良の事件のことに夢中だったので、推し鑑賞会が開かれるはずだった昨日も、チェックをできずにいた。
「愛良。私、愛良の分も推すよ。ー蓮夜くんを。」
私が、推さないと!蓮夜くんを。私は、蓮夜くんのファンだから。
その思いを胸に、結衣は「you=me」の公式YouTubeチャンネルに、いいね!を押すことにした。
「蓮夜くん、かわいい~。ヤバい、キュン死しそう。」
一人で騒いでも意味がない。愛良がいないのだから。愛良がいなくなったから、蓮夜くんを推すのをやめる、という訳でもない。
ただ、結衣は、一人で蓮夜くんを観て喜ぶ自分より、愛良と一緒に推し活していた方が楽しいと思っていた。
惨めだ。
辛いのに誰にも言えない。愛良しかいなかった。
たった一人の親友。大事な存在。