ある日の午後、結衣は警察から取り調べを受けていた。
「愛良を殺した犯人は一体誰なの?私にも、捜査を手伝わせてください。」
「えっと。今は殺人犯じゃなくて、愛良さんの身内や友達を捜しているけど、部外者は…」
結衣は、警察官を思いっきりにらんでやった。『部外者』だと?世界一嫌な言葉だ。
「子供だから」という理由で、捜査の手伝いさえさせてくれない。
結衣は、腹が立って仕方なかった。
「私、愛良を殺した犯人を絶対に見つけてやるから。もちろん、警察官さんよりも先にね。」
「ちょっと君!部外者は引っ込んでろって言っただろ。む、無視なんかするんじゃない!」
結衣のことを『部外者』と言った警察官は、結衣を追いかけようとして、手に持っていたコーヒーをこぼしてしまった。
「あ~、もったいない。コーヒーが泣いてるよ?『部外者』警察官さん。」
嫌味たっぷりに言ったはずだったが、警察官は顔色を変えず、こちらを見つめていた。
「やばっ!」
結衣は焦った。なぜかというと、警察官の眼が、「死んでいた」からだ。逃げるしかない。
結衣は、マンションのドアめがけて走った。学校に行けば、先生がいるかも。スーパーに行けば、知り合いがいるかも。
だが、運動神経ほとんど0の結衣より、警察官さんの足のほうが速く、簡単に捕まってしまった。
「このあと、保護者様を呼ぶから、待ってろ。ーあ~もう。どんな教育してるんだか。」
最後だけわざと声を大きくして、警察官は言った。
多少イライラしたが、これより大事に至ると大変なので、睨みすらやめておいたー。

「あんた、何やってんのよ!馬鹿な事しないでくれる?ちょっと、謝る気ないの?」
深夜零時のマンションに怒鳴り声が響いた。声の主は、結衣の母だ。
「バチンッ」
久しぶりに叩かれたな。
そう思いながら、結衣は母に言う。「ごめんなさい。もうやりませんー。」
 翌朝、結衣は愛良の写真をすべて集めた。
二人で一緒に撮った写真や、プリクラの写真など、様々な写真が壁に飾られている。
愛良の写真はどれもキラキラ輝いていた。 ポトリ。涙の雫が大事な写真に零れ落ちた。
なんでこんな素敵な子が、殺されないといけないのか。
心の底から湧き上がってくる、「怒り」という感情を、ゆっくりと呑み込んだー。