最後の愛良に会ったのは、結衣だった。
「愛良、嘘でしょ。」
涙が出なかった。と、いうか泣く気力さえなくなっていた。
今は、悲しみより、大事な親友を奪われた怒りの気持ちのほうが強かった。
人間というものは、とても儚い。その事実に、結衣は初めて自覚したのだったー。
「ねぇ、愛良。一緒に行こうって、言ったじゃん。愛良の、嘘つきっ!!」
静かにつぶやいた。愛良はきっと、天国で見守ってくれているんだ、と信じて。
数日前までは、一緒に居た。いたずらをしあっていた。そんな、大事な仲間が殺された?
一体誰に?どんな目的で?
いろいろな疑問もあった。でも、一つだけ、決めたことがあった。
『絶対に愛良を殺した犯人を見つけてやる。』と。

 それから、一週間が経った。
結衣は、愛良の葬式に出席した。そのときは、たくさん涙を流すことができた。
愛良の両親は、これかというぐらい、悲しんだ。
「おばさん。私、いつでも、相談に乗るから。えっと…で、できることがあったら、私も…」
結衣は愛良の母に話しかけた。
「ーええ。ありがとう、結衣ちゃん。」
彼女は、目も、鼻も真っ赤だった。泣きすぎて疲れたようだ。もちろん結衣もそうだ。
「私も一緒だよ、おばさん。辛いなんて言葉じゃ言い表せない。本っ当に世の中って理不尽だよねっ!!」
結衣は叫んだ。自分の鼓膜が破れるくらいに。
「本当に、嫌だよね。辛くて、苦しくて、何もかもが嫌だよね。」
「ええ。あの子はとても素敵な子だった。なのに、何なのよ!」
運命に向かって、二人で大きく叫んだ。
「「馬鹿野郎」」
おばさんは、しばらくすると、メインホールへと戻っていった。
結衣は、すぐそこにある愛良の写真に向けて、自分の想いを伝えた。
「愛良。私、必ず犯人を見つけてみせるから。天国で…見守っていてね…」
最後のほうは、嗚咽に混じって、変な声になってしまった。でも、それでも、愛良に決意を伝えられた。
愛良はきっと、天国で微笑んでいる。その「妄想」を信じで、結衣は会場から出て行った。
愛良が、焼かれるところは、絶対に見たくないからだ。
もうすぐ卒業式だ。愛良もいないんじゃ、高校も楽しくないな。
そんなことを想っても、愛良はもういない。その正論に吐き気がした。世の中は、本当に理不尽だ。
涙が、頬をかすめた。