とある中学校で。
「私たちの推しサイコー‼」
結衣と愛良は二人で叫んでいた。二人は親友。そして、推し友だ。二人が推しているのは、「you=me」の蓮夜くんだ。
高身長で、顔もよくて、なによりファンに優しい。全・中高生を虜にした、スーパーアイドルだ。
「本当にこの写真、癒される~。」
二人が見ているのは、蓮夜くんをメインにメンバー全員がじゃれあっている写真だ。「結衣たちは日々の疲れを蓮夜くんで癒している。」と言っても過言ではない。毎週金曜日に、結衣たちは「わざわざ」教室に遅くまで残って、「蓮夜くん鑑賞会」を開いている。
今日は、金曜日。ということで、結衣たちは今日「鑑賞会」を開いている。今、まさにその途中なのだ。
「いいよね~。」
「いいね~」
他愛もない会話をして、写真を食い入るように見る。二人にとって、それは日課のようなものだった。
ただ、結衣には気になったことがあった。
「おばさんたちにちやほやされて何がいいんだろう。」
が、愛良の意見は違うようだ。「でも…」と、話を続ける。
「蓮夜くんて、どんな人にも優しいじゃん。私たちがライブに行った時にも優しくしてくれたし、さ。」
確かにそうだ。蓮夜くんは、どんなに「嫌らしい」ファンでも優しくしていた。
「う、うん。そうだよね。」
結衣はさりげなくごまかした。そのとき、親友との間に見えない壁が立ちはだかったように見えたのは、気のせいだろうか。
「ね、ねぇ。愛良。大ニュースだよ。」
「えっ。なになに?いい方?悪い方?」
「蓮夜くんの五周年記念ライブの、チケットが、当たったよ!」
「嘘でしょ⁉えっ。ホント?」
「ホント。ガチでホント。」
大ニュースだ。いや、大・大ニュースだ。二人で行ける。
五周年記念東京ライブに、行ける!!!
愛良と結衣は飛び上がって喜んだ。愛良の笑顔はとてもかわいらしかった。
二人が計画している東京ドームライブに行くのは、三日後だ。
結衣も愛良もとても楽しみにしていた。
ーだが、その夢は、叶わなかった。ライブ前日、愛良が何者かによって、殺されたからだ。



