あれから、どれくらい経っただろうか。

 何度も何度も校門に向かった。

 それでも、何度も変わることなく校門から弾き飛ばされるようにまた同じ場所へと戻された。

 いったい……いったい何なのだろうか?

 これは基樹への仕返しではなく、わたしに下された罰なのだろうか。

 いつまでここにいるのだろうか。

 まさか、ずっとこのままここにいろというのか。

 夜になってしまってもずっとひとりでこの場所をさまよっていないといけないのだろうか……などとあまりにも失敗が続くとだんだん不安な気持ちが顔を出し、それからは嫌な予感でいっぱいになり始める。

 何がしたくてわたしはこの場所にいるのだろう。

 やり直しがきくとしたら、この時期だというのだろうか。

 でもわたし自身は高校生のままだ。

 このままの姿でここでやり直せというのだろうか。

 ホイッスルの音が響き、ふと顔を上げると、サッカー部の誰かがシュートを決めたようで歓声が上がったところだった。

 どうせ校門に向かったって変わらないだろう。それなら久しぶりに基樹がボールを操る姿でも見に行こうかとグランドに向かって重い腰を上げた。

 やはり高校の制服に身を包んだわたしは違和感があるようで、過ぎゆく人たちに凝視される。

 何度かの失敗を重ねたわたしはすでに心身ともに弱り切っていて、もうそんなことを気にする余裕もなかったのが唯一の救いだった。

「やっぱり赤石くん、かっこいいよね!」

 隣の女の子たちが頬を染めてきゃあきゃあと声高らかに話してる声が聞こえる。

 この暑い中でも彼女たちの表情はキラキラと輝いて見える。

 これまた本当に懐かしい光景だ。

 今はわたしに気を使って、こんな風に思いのままに明らかな好意をあらわにする同級生もほとんどいないため、最近はみんながのびのび応援できるようわたしの方も気を使ってできるだけ彼が活躍している場に出向かなくなったりしたほどだ。

 これからはまたこうして堂々と彼を応援する声が戻ってくるのだろうかと思うとやっぱり面白くなかった。

 もちろん、中学生当時のわたしは基樹の応援どころか彼を近くまで見に行くことさえできず、かっこいいとさえ口が裂けても言えなかったから何度も何度もいろんなクラスの女の子たちがそう話すのをこっそり聞いてはそうそう!と心の中で同意していたものだ。

 グランドの上で無邪気に笑う基樹に、あの頃と同じように頷いている自分に気付く。

 最後にサッカーボールを追いかける基樹を見たのはいつだろうか。

 もはや覚えてさえいない。

 ミッドフィールダーは司令塔なのだと教えてくれたから、一生懸命調べることになった。ゴールキーパーやディフェンダー以外聞いたこともなかったし、インターネットで調べた検索結果を見てもなかなか理解はできなかった。

 攻撃も守備も両方の役割を担う……なんて、何でも屋もいいところだ。

 責任感が強く、面倒見の良いお人好しの彼にぴったりだと思ったくらいだ。

 最初は彼が教えてくれるサッカーにまつわる話が新鮮で面白くて、なんなら目を輝かせて語ってくれる彼の姿がとても好きだったから永遠に聞いていられるとよく耳を傾けたものだけど、自分が観に行く機会もなくなった今では、どうせ聞いたって……と、そんなのはどうでもよくなってしまっていたのは正直なところだった。

 まぁ、降られた理由はやっぱりわたしにあるのだと思う。