いつだって、基樹のそばには誰かがいた。

 大きな口を開けて楽しそうに笑う男子たちや身なりをきれいに整えた女の子たち。はたまた大人びていてきれいなメイクを施した高校生とか。

 いつも基樹の周りには誰かがいて、基樹基樹と彼のことを慕っていた。

 付き合ってから彼らのことを紹介してもらえたけど、彼らも大切な基樹が付き合い出したという新しい恋人があまりにも地味な人間で、最初の頃は言葉を失わせたり、かなり気を使わせていたのは知っている。

 隣に並べるなんて思っていなかった。

 ただただ毎日後ろから眺めている日々が幸せで嬉しくて、彼の初めて見る様子をひとつでも多く見つけられた日は飛び上がるほど嬉しかった。

 二年生の文化祭で、基樹がシンデレラの演目で王子様役を演じたときは、周りの方たちはとても嘆いていたように思うけど、わたしは学年で一番可愛いと言われていた麗華(れいか)ちゃんが基樹の相手役であるシンデレラ役を演じていて、あまりにもお似合いなふたりの様子に思わず見入ってしまったのを覚えている。

 基樹の近くにはいつもたくさん人がいて、彼は中心にいた。

 これからは彼の人生の登場人物のひとりにさえなれないけど、どうせこれからもまた彼はいろんな人を笑顔にして、虜にしていくのだろうなと思ったら、少しだけさみしい気持ちがした。

 彼の未来には、もうわたしはいないのだから。