「し、心配して損した」
ぶっきらぼうにつぶやく彼に、これ以上は怒らせるだけだろうけどますます頬が緩む。
「……変わんないね」
「は?」
「全く無関心なようでお人よし」
意外だとか、見慣れないとか……とんでもなかった。
わたしは覚えている。
わたしがずっとずっと遠くから眺め続けていた人は、こんな人だったなぁって。
「ば、バカにしてんの?」
「ううん。今日一日で、いろいろと懐かしいあれやこれや昔のことをいろいろ思い出してね。それであんたのことも思い出したのよ」
ふふっと笑うと、意味わかんねぇとまた頭を抱える基樹。
そのしぐさがあまりにかわいくて、目頭が熱くなった。あたりが暗くてよかったとさえ思う。
「お人よしのばーか」
「はぁ?」
「懐かしい」
もうこうやって基樹とああだこうだ話すことなんて、最近のわたしにはなかったから。
笑いあったのだっていつぶりだろう。
そういえば、いつも一応付き合っているということで、帰りもどちらから誘うわけでもなく一緒に帰ってはいたけどお互いにこれといって積極的に話題を出すタイプでもなかったし、どちらかというと無言が続くことのほうが多かった。
たまに話題のカフェができたと一緒に向かっても、結局途中からお互い自分のスマホの画面に釘づけだったような気もする。
最初は隣に並んで歩くだけでも夢かと思って足がすくみ、一歩あとを歩こうとしがちで見かねた基樹に手を引かれて無理やり隣に並ばされたこともある。
初めて手をつかまれた時なんて、それどころではないのに腰を抜かしかけ、彼を呆れさせたものだ。
(そんな突然に初めて手をつなぐことになるなんて思っていなかったんだもん……仕方ないわよ)
だけど、このごろは手だって繋いでもどちらからともなくすぐに離してしまって、それからはもう離れた指先は繋がることはほとんどない。
いつの日からか、初めて背伸びをして飲んだアップルティの味もあの頃とは別の意味でわからなくなっていた。
いつからこんな風になってしまったのだったか……それさえももはや覚えていない。
「あっ、といっても、わたし……こんなかわいらしいあんたは知らなかったかも」
「はぁっ?」
わたしがあまりに自分の世界に浸っているものだから、罰が悪そうな表情になった基樹にわざとからかうように言ってやる。
「なんだろうな。わたしが付き合った時のあんたは……そうだな、もう少し今よりもあとの姿なのかな。もう現在のほぼ完成形のようなもので、完璧だったというか……だからわたしもわたしで緊張してしまってたからあんまりこうやってふたりでバカなことを言い合うこともなかったんだよね」
しみじみ思い出して言葉をつなげていく。
もちろん彼も基樹本人ではあるのだけれども、現在の高校生の彼ではない分、言いやすいというか、状況も状況なのでこの際だからまぁいっかって……なんて、そんなノリで何でも言えそうな気がした。
こんなにも基樹と自然に会話をするのは、付き合っていてもなかったようにさえ思えた。
だからこそ、彼には申し訳ないけど心のどこかで楽しいとさえ思ってしまった。
ぶっきらぼうにつぶやく彼に、これ以上は怒らせるだけだろうけどますます頬が緩む。
「……変わんないね」
「は?」
「全く無関心なようでお人よし」
意外だとか、見慣れないとか……とんでもなかった。
わたしは覚えている。
わたしがずっとずっと遠くから眺め続けていた人は、こんな人だったなぁって。
「ば、バカにしてんの?」
「ううん。今日一日で、いろいろと懐かしいあれやこれや昔のことをいろいろ思い出してね。それであんたのことも思い出したのよ」
ふふっと笑うと、意味わかんねぇとまた頭を抱える基樹。
そのしぐさがあまりにかわいくて、目頭が熱くなった。あたりが暗くてよかったとさえ思う。
「お人よしのばーか」
「はぁ?」
「懐かしい」
もうこうやって基樹とああだこうだ話すことなんて、最近のわたしにはなかったから。
笑いあったのだっていつぶりだろう。
そういえば、いつも一応付き合っているということで、帰りもどちらから誘うわけでもなく一緒に帰ってはいたけどお互いにこれといって積極的に話題を出すタイプでもなかったし、どちらかというと無言が続くことのほうが多かった。
たまに話題のカフェができたと一緒に向かっても、結局途中からお互い自分のスマホの画面に釘づけだったような気もする。
最初は隣に並んで歩くだけでも夢かと思って足がすくみ、一歩あとを歩こうとしがちで見かねた基樹に手を引かれて無理やり隣に並ばされたこともある。
初めて手をつかまれた時なんて、それどころではないのに腰を抜かしかけ、彼を呆れさせたものだ。
(そんな突然に初めて手をつなぐことになるなんて思っていなかったんだもん……仕方ないわよ)
だけど、このごろは手だって繋いでもどちらからともなくすぐに離してしまって、それからはもう離れた指先は繋がることはほとんどない。
いつの日からか、初めて背伸びをして飲んだアップルティの味もあの頃とは別の意味でわからなくなっていた。
いつからこんな風になってしまったのだったか……それさえももはや覚えていない。
「あっ、といっても、わたし……こんなかわいらしいあんたは知らなかったかも」
「はぁっ?」
わたしがあまりに自分の世界に浸っているものだから、罰が悪そうな表情になった基樹にわざとからかうように言ってやる。
「なんだろうな。わたしが付き合った時のあんたは……そうだな、もう少し今よりもあとの姿なのかな。もう現在のほぼ完成形のようなもので、完璧だったというか……だからわたしもわたしで緊張してしまってたからあんまりこうやってふたりでバカなことを言い合うこともなかったんだよね」
しみじみ思い出して言葉をつなげていく。
もちろん彼も基樹本人ではあるのだけれども、現在の高校生の彼ではない分、言いやすいというか、状況も状況なのでこの際だからまぁいっかって……なんて、そんなノリで何でも言えそうな気がした。
こんなにも基樹と自然に会話をするのは、付き合っていてもなかったようにさえ思えた。
だからこそ、彼には申し訳ないけど心のどこかで楽しいとさえ思ってしまった。



