「誰かガムテープの予備持ってる人ー?」

「次はこのシーンから始まるよー」


ついに本格的にうちのクラスも劇の練習や小道具作りが始まり、私はというと恥ずかしい気持ちで隅っこでじっとしていることしかできなかった。

まさか自分が書いている小説がクラスメイトの手によって劇化されるとは…。

しかも、主演はあの西園寺くん。


「きゃー西園寺くん、立ってるだけでかっこいい…」

「セリフ読んでるところとか萌えなんですけどー!」


セリフ練習をしているだけで騒がれる、一軍男子代表の西園寺くんは今日もどこから見ても完璧だ。


「あー疲れたわもう。ちょっと休憩してくるから山田、この続き適当にやっといてくんね」

「おー…って、俺がやっても意味ねぇだろ!」


あははと笑いに包まれているクラスメイトたちだけど、西園寺くんの言葉に冗談は一つもなく、本当に教室を出て行ってしまった。

山田くんはそんな西園寺くんにはもう慣れっこなのか、仕方なくセリフの続きをクジで決まったヒロインの女の子と進めていた。

西園寺くんのわがままっぷりには、もうこのクラスみんなが慣れている。そういうものだと理解している。

だってそれが許されるのが、西園寺一樹くんという人間なのだから。