“会話に加わりなよ”と言いたげな視線に気づくが、へらっと笑って誤魔化す。


茜ちゃんとは、小学生の頃から同じ学校に通う幼なじみである。

西園寺くんの周りにいる一軍女子であるけど、昔から唯一私に話しかけてくれる優しい女の子。

私の癖っ毛であるロングの髪の毛とは違い、サラサラの黒髪ロングが特徴で、人をまとめる力がずば抜けて高く茜ちゃんを嫌う人なんてこの世界には一人もいないだろう。

優しくて面白くて、笑顔がよく似合う、そんな憧れの幼なじみ。


「あ、じゃあさ、今ネットで話題になってる自作小説の劇やるっていうのはどう?学園ものなんだけど、切なくて泣けるからきっとお客さんもたくさん来てくれると思うんだ」

「え、それもしかして、私が今読んでる小説かも!」

「それ、俺も読んでる気がする。妹にしつこいくらい勧められて読んでる恋愛小説があんだけど、男でもなぜかスイスイ読めるやつでさ」


茜ちゃんの一言でバラバラだったクラスメイトの意見が一つにまとまってきた。

それにしても、なんだか嫌な予感が…。


「“わたしときみの物語”ってやつ!」


さーっと血の気が引いていくのを感じるが、みんなはそんなことに気づきもせず劇の内容があれよあれよという間に決まっていく。

みんなが盛り上がっている小説は、紛れもなく私が書いたものだった。