「なんだよ? 俺の顔に何か付いてるか?」
慌てて首を振る。
「ごめん。そうじゃない」
「じゃ、なんだよ?」
「う〜ん。よく分からないんだけど、青島くんの口元がいつもより緩い気がして。なんだか、ウキウキしてるみたいだし……ああ、もしかして、何か楽しいことでもあった?」
いつもの彼から受ける印象の違いを口に出して言ってみると、先ほど緑と話をした時の自分の心情に近い気がして、そう聞いてみた。
私のその言葉に、青島くんは素早く口元を隠し、軽く俯いてしまう。指摘してはいけないことだったのだろうか。
「あの。ごめん。なんか楽しそうに見えたから。余計なことだったよね」
彼のどこかソワソワとした態度に、思わず立ち止まって頭を下げる。余計なことを言ってしまったようだ。私にはまだ、人の気持ちを感じ取るなんてことは出来ないみたい。いつも私の気持ちがわかる緑ちゃんはすごいな。
慌てて謝罪をしながら、友人に対してそんな尊敬の念を抱いていると、足元の影が一歩私へ近づいた。
顔を上げると、相変わらず青島くんは手で口元を隠し、困ったように眉尻を下げていた。
「いや、あの、別に怒ってないから、謝らないで」
「でも……」
なんといえば良いのか分からず言葉に詰まっていると、彼はクシャリと頭を掻いた。そして、そっぽを向いて口を開く。
「俺、今、楽しいよ。白野が言った通り、楽しいと思ってるよ」
「そ、そう」
どうやら人の気持ちを読むことに不慣れな私の見立てが当たっていたようだが、それにしては、モジモジとしている青島くんの態度は、私が指摘する前とは違うような気がする。
彼の意図が分からず戸惑っていると、意を決したように青島くんは口元を覆っていた手を下げ、クイっとこちらへ顔を向けた。
「俺は、白野と話ができて、一緒に帰れて楽しいと思ってる」
「う、うん」
青島くんの勢いに気圧されながら、なんとか相槌を返す。そんな私の目を青島くんはじっと見つめてきた。
青島くんの不思議な瞳に見つめられ、私の心臓はドキドキと音を立てて、その速度を速めていく。そんな私の心臓のことなど青島くんには分からないのだろう。彼はまた一歩、私に近づいた。
近づいたからだろうか。先ほどよりも、少し声のトーンを抑えて、彼は静かに話し出す。
「俺は、いつだって白野と話がしたい。出来ることなら、一緒に帰りたい。白野との時間をもっと増やしたいと思ってる。だから、こうやって一緒に帰れて嬉しいし、楽しい」
慌てて首を振る。
「ごめん。そうじゃない」
「じゃ、なんだよ?」
「う〜ん。よく分からないんだけど、青島くんの口元がいつもより緩い気がして。なんだか、ウキウキしてるみたいだし……ああ、もしかして、何か楽しいことでもあった?」
いつもの彼から受ける印象の違いを口に出して言ってみると、先ほど緑と話をした時の自分の心情に近い気がして、そう聞いてみた。
私のその言葉に、青島くんは素早く口元を隠し、軽く俯いてしまう。指摘してはいけないことだったのだろうか。
「あの。ごめん。なんか楽しそうに見えたから。余計なことだったよね」
彼のどこかソワソワとした態度に、思わず立ち止まって頭を下げる。余計なことを言ってしまったようだ。私にはまだ、人の気持ちを感じ取るなんてことは出来ないみたい。いつも私の気持ちがわかる緑ちゃんはすごいな。
慌てて謝罪をしながら、友人に対してそんな尊敬の念を抱いていると、足元の影が一歩私へ近づいた。
顔を上げると、相変わらず青島くんは手で口元を隠し、困ったように眉尻を下げていた。
「いや、あの、別に怒ってないから、謝らないで」
「でも……」
なんといえば良いのか分からず言葉に詰まっていると、彼はクシャリと頭を掻いた。そして、そっぽを向いて口を開く。
「俺、今、楽しいよ。白野が言った通り、楽しいと思ってるよ」
「そ、そう」
どうやら人の気持ちを読むことに不慣れな私の見立てが当たっていたようだが、それにしては、モジモジとしている青島くんの態度は、私が指摘する前とは違うような気がする。
彼の意図が分からず戸惑っていると、意を決したように青島くんは口元を覆っていた手を下げ、クイっとこちらへ顔を向けた。
「俺は、白野と話ができて、一緒に帰れて楽しいと思ってる」
「う、うん」
青島くんの勢いに気圧されながら、なんとか相槌を返す。そんな私の目を青島くんはじっと見つめてきた。
青島くんの不思議な瞳に見つめられ、私の心臓はドキドキと音を立てて、その速度を速めていく。そんな私の心臓のことなど青島くんには分からないのだろう。彼はまた一歩、私に近づいた。
近づいたからだろうか。先ほどよりも、少し声のトーンを抑えて、彼は静かに話し出す。
「俺は、いつだって白野と話がしたい。出来ることなら、一緒に帰りたい。白野との時間をもっと増やしたいと思ってる。だから、こうやって一緒に帰れて嬉しいし、楽しい」



