私は、緑の言葉に驚いた。

「クリスマスも初詣も、どこかつまらなさそうというか、心ここに在らずって感じで。でも、無理して楽しもうとしているような感じもしてたから、何か言えない悩み事でもあるのかなぁって気になってたの」
「緑ちゃん……」

 フリューゲルがいなくなってからの私は、何をしても楽しくなかった。何かを特別に感じることもなかった。心のどこかにぽっかりと穴が開いてしまって、その穴から私の気持ちはすべてがこぼれ落ちていた。

 でも、フリューゲルの事は、私にはどうすることも出来ないのだからと自分に言い聞かせ、周りに心配をかけないよう明るく振舞っていたつもりだったのに、どうやら下界人一年生の私では、上手く振舞えていなかったようだ。

「あの……心配かけてごめんね」

 私が頭を下げると、緑は慌てて手を振った。

「違うの。責めてるとかじゃないから。私が勝手に元気がないなって、気にしていただけだから」
「うん」
「でも、元気がなさそうとはいえ、出会ったころに比べたら、つばさちゃんの心の声が表面に出てきていて分かりやすくなってたから、様子を見て、どうにも一人じゃ抱えられそうになくなったら、声をかけようと思ってたの。その判断ができる程度には、私はつばさちゃんのこと見てるんだぞ」

 えへっと笑う緑の笑顔に、私の胸がじんわりと温かくなった。

「本当に心配かけてごめんね」

 私はもう一度頭を下げた。それから、ニッと笑って見せた。

「緑ちゃんの言う通り、ちょっと悩んでいたけと、さっき解決したの。正確には、まだ完全に解決したわけじゃないけど、でも、もう大丈夫」

 私はそう言って、少し離れたところに居るフリューゲルへ、チラリと視線を向ける。その視線に気がついたフリューゲルが、コクリと頷いた。

 私たちの繋がりについては、この後しっかりと話してもらおう。どんな話になるのか気になるけれど、それよりも今は、双子の片割れがこうして戻ってきてくれたことが私の心を軽くさせていた。

「大丈夫なら良いの。でも、何かあったら遠慮なく相談して。私だって、つばさちゃんの力になりたいんだから」
「私だって?」

 緑の言葉の意味するところが分からなくて、そう聞き返すと、緑はニヤリと笑った。

「だって、ヒロくんには相談してるんでしょ?」

 そんな緑の言葉に、思わず目を見開く。青島くんに話を聞いてもらったのなんて、あの日くらいだ。そのあとは、日常会話くらいしか言葉は交わしていない。